オープン戦も終盤に差しかかり、各球団ともペナントレース本番を意識した選手起用が目立つようになった。若手選手をベンチに下げ、レギュラークラスを使い始めたのだが、気掛かりなのは中日ドラゴンズの不振。打撃陣の調整が著しく遅れているようだ。
「レギュラーと控えの力量差が大きいチームでもあります。そのせいか、レギュラークラスの選手たちはスロースタートになりがち。打線が湿りがちなのはそのせいでしょう」(スポーツ紙記者)
オープン戦8試合を終えて、2勝6敗。勝率は12球団ワースト、規定打席数に到達した選手を見てみると、チームトップの打率が高橋周平の2割9分2厘で、他選手は打率1割台というお粗末ぶりだ。
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その影響だろう。福留孝介外野手の一軍昇格を推す声も出始めた。
「ウエスタン・リーグ春季教育リーグで、福留が絶好調なんです。昨年、阪神を解雇された屈辱もバネになっているのでは。3月14日のソフトバンク戦(二軍)では、和田毅からヒットを放っています」(名古屋在住記者)
和田は一軍の先発ローテーションに入ってくる好投手だ。ソフトバンクには他にも調整登板させなければならない投手がいるため、二軍戦に登板したのだが、その主力投手からヒットを放ったのだ。順調な調整ができていると見て間違いないようだ。
教育リーグの成績を調べてみたら、同日時点での福留の打撃成績は、3割8厘。出塁率では5割6分5厘とかなり高い数値を残していた。「福留を一軍に」の声が出るのも当然だが、こんな指摘も聞かれた。
「福留を昇格させるとなれば、誰を二軍に降格させるのか…。根尾ってことになりませんかね?」(球界関係者)
根尾は外野手でオープン戦を奮闘中。キャンプ終盤までは「ショートで京田と勝負させる」と首脳陣も語っていたが、突然の外野転向となった。昨季は外野でスタートさせて、途中からショートに戻している。
この一貫性がない起用法に与田監督は「出場機会を増やすため」と反論していたが、根尾の打撃も1割台。いきなりの外野守備に戸惑い、それがバットにも影響したのかもしれない。
「左打ちの外野手ということで、福留と根尾は戦力として“重複”します」(前出・同)
今さらだが、福留は中日でプロ野球人生をスタートさせた。中日はチーム功労者を大切にするチームでもあり、“完全燃焼する場所”を探していた福留に手を差し伸べた。
「その恩に応えたいと強い思いを持っています。今年はかなり走り込んでいます」(前出・名古屋在住記者)
根尾がこのままバットで結果を出せなければ、福留と入れ代わる可能性も高い。
「オープン戦とは言え、負けが込んできてチームの雰囲気も良くありません。打線が上向きにならなければ、一軍昇格だけではなく、福留の開幕スタメンもあり得ます」(前出・球界関係者)
福留は後輩たちを叱ることもでき、阪神時代は“影の監督”とも位置づけられてきた。根尾を育ててもらいたいが、今必要なのは、福留の方だ。2021年の中日は“43歳のスタメン”でスタートすることになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)