これも、三浦大輔新監督のチーム改革の一環だが、不安要素もないわけではない。「機動力」は、開幕戦には間に合わないようだ。
「三浦監督は『今はそれでいい』と言っていますが」(プロ野球解説者)
対外試合6試合を終えて、約34%。何の数字かというと、盗塁の成功率だ。21回も仕掛けたが、成功したのは7回しかない。就任した直後から俊足の神里和毅外野手の1番定着を理想と語っていたように、チームに機動力を定着させようとしていた。
足の速い選手も少なくなく、その狙いは間違っていないが、盗塁の成功率がこんなに低いようではペナントレース本番では怖くて仕掛けられないだろう。
>>DeNA・三浦監督、戦略明かし「失敗する予感しかしない」反発の声 昨季も3チームが掲げた機動力強化のデメリットとは<<
「二軍監督だった昨季、ファームの選手を走らせ、手堅くバントも多用していました」(前出・同)
今さらだが、そんな試合運びを見て、「三浦監督の誕生は近い」とメディアも確信していた。一軍を預かっているラミレス監督は犠打、盗塁を仕掛ける作戦をあまり好まなかった。盗塁数は20年まで2年連続でリーグ最少、犠打においては5年連続、つまり、監督だった全5年間、「バントで送る」という攻撃を嫌った。
三浦監督は二軍で真逆なことをやっていたのだ。
「チームに走るという意識を植えつけるのが狙いなのか、本当にペナントレース本番でも『機動力』を絡めるつもりなら、ベンチも動かなければなりません」(球界関係者)
プロ野球の盗塁とは、「足が速い」という選手個々の身体能力だけではほとんど成立しないのだ。昭和時代からそうだが、スコアラーが対戦チームの主力投手の映像を集め、牽制球を投じる時とそうでない時のクセを徹底的に分析する。また、2000年代からはバッテリーの配球傾向も合わせて研究するようになり、「球速の落ちる変化球が投じられた時に走る」というやり方も定着している。
外から見る限り、DeNAのスコアラーなど裏方スタッフがそういった研究をしている形跡も見られないのだ。
三浦監督は盗塁の成功率が低いことをメディアに質問され、こう答えている。
「やってみないことには、何ができて何ができなかったのかが分からない。やってみて、見つかった課題をつぶすように練習で取り組んでいけば…」
「簡単には変わらない」の言葉も何度か繰り返していた。三浦監督も盗塁が選手とスコアラーの共同作業であることは分かっているはずだ。額面通りに受け止めれば、機動力野球への変貌よりも、チームの意識改革という第一段階が目的のようだ。
「対外試合が始まってから、FA移籍した梶谷の人的補償で巨人から獲得した田中俊太内野手の名前を挙げるようになりました。二遊間の守備固めを狙っての田中獲得でしたが、田中は対戦投手のクセや配球傾向にも着目でき、三浦監督の評価もうなぎ登りです」(前出・同)
その田中が定位置を獲得し、巨人戦で機動力を発揮してくれたら、痛快なシーンとなるだろう。三浦監督は現役時代から「やってみろ」が口グセだ。成功すれば御の字、失敗してもそれが後の糧となるという持論だ。今は盗塁成功率の低い選手たちに「なぜ、失敗したのか」を考えてほしいと思っているのだろう。
すぐに「答え」を与えない。考えさせている。遠回りかもしれないが、人に教えられたことよりも自分の見つけたことの方が本当の力になる。三浦改革はその歩みは遅いが、着実に進んでいるようだ。(スポーツライター・飯山満)