「コーチ復帰」。この一報が飛び込んできた1月11日、その瞬間こそ、「キャンプの臨時コーチでしょ?」と、各メディアは高を括っていた。しかし、球団や各方面への確認を進めるにつれ、様相が変わってきた。“通常コーチ”として、巨人に帰還するからだ。
桑田氏のコーチ就任に驚いた理由はいくつかある。まず、原辰徳監督以下、来季のコーチたちは昨年末のうちに集まるなどし、21年度のチームビジョンを話し合っている。チームビジョンの最終的な意見のすり合わせはキャンプイン直前だが、桑田コーチは“追加増員”ということになる。
「原監督は後輩にあたるOBたち、とくに、巨人と距離ができてしまったOBたちを呼び戻そうとも苦慮してきました。第二期政権ではFAで他球団に移籍した駒田徳広氏に臨時コーチを依頼したこともありました」(ベテラン記者)
今回のコーチ要請もその一環なのだろうか。巨人と氏の間にわだかまりはない。
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しかし、桑田氏は現場からかなりご無沙汰しているのも事実だ。巨人退団後はメジャーリーグに挑戦し、早大大学院スポーツ科学研究科の修士課程トップスポーツマネジメントコースで学んでいた。さらに、プロ野球中継の解説だけではなく、東大野球部と桜美林大での特別コーチ、スポーツ庁参与なども務めてきた。
「現在も東大大学院総合文化研究科に在籍し、投球フォーム、打撃フォームの研究、動作解析などを続けています。大学での投球フォームの研究というと、ソフトバンクの工藤監督や千葉ロッテの吉井コーチが思い出されます。ソフトバンクに対抗するため、桑田氏にコーチ要請したのかもしれません」(プロ野球解説者)
また、次期指揮官の阿部慎之助二軍監督の参謀役という見方もされていた。
「阿部二軍監督が体調を崩した元木大介ヘッドコーチの代わりに一軍帯同したことがありました。その間、サンチェスが捕手のサインを無視したことがありました。それに対し、阿部二軍監督は激昂しました。サンチェスが捕手とチーム全体に謝罪して一件落着となりましたが」(球界関係者)
その時、激昂する阿部二軍監督に対し、原監督が「まあまあ…」と諫めたという。
阿部二軍監督の“熱すぎるチーム愛”に、冷静沈着な参謀役も必要だと思ったのかもしれない。だが、阿部二軍監督の憤怒は昨年9月の話。桑田氏の名前が挙がっていたとすれば、年内のもう少し早い時期にまとまっていたはずだが…。
「ルールでは、一軍戦のベンチに入れるコーチは8人まで。投手担当として、宮本知和投手チーフコーチと杉内俊哉投手コーチがベンチ入りすると聞いていますが」(前出・プロ野球解説者)
「一軍には帯同するが、試合中はベンチ裏で」ということになるのだろう。それとも、昨年の水野雄仁巡回投手コーチのように、一軍とファームの両方を見て回るのか。桑田氏もコーチ帰還するのなら、試合中に監督へ進言する機会は持ちたいと思っているはず。「8人」のコーチ枠をどう割り振るのか、注目したい。(スポーツライター・飯山満)