報道によると、昨年9月26日の練習中に同監督が1年生の男子部員に素手でノックを3球受けさせ、左手に全治3週間の怪我を負わせたという。また、同監督が「指導の一環だった」と容疑を認めていることも伝えられている。
指導者が度を超した指導で選手を怪我させたというこの一件を受けネット上には批判や反発が噴出し、元阪神・藤川球児氏も6日に自身の公式ツイッターを通じて「この行いが正解か不正解かも分からないのか…」と苦言を呈している。一方、一部では「素手ノックで選手が怪我って昔の広島キャンプかよ」、「素手ノックって言葉を見て野村のことを思い出した」といったコメントも見られた。
コメントで挙がっている野村謙二郎は現役時代広島(1989-2005)一筋でプレーし、引退後は広島監督(2010-2014)も務めた人物。54歳となった現在は野球解説者として活動しているが、現役時代の春季キャンプ中に“自ら”素手ノックを受け故障したことがある。
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野村が素手ノックを受けたのは、当時プロ11年目・32歳だった1999年の春季キャンプ。この年の広島は過去に2度(1979-1983,1989-1991)チームでコーチを務め“鬼軍曹”と呼ばれていた大下剛史がヘッドコーチとして復帰したこともあり、春季キャンプでは猛練習を敢行。大下にとって駒澤大学の後輩に当たる野村も例外ではなく、連日大下から厳しく指導を受けていた。
キャンプも終盤に差し掛かった2月19日、この日も野村は大下から「死ぬか分からんぞ」と言われながらランチタイム返上でノックを受けていたが、その途中で何を思ったのか左手に着けていたグラブを投げ捨て、素手のまま「こい!」とノックを要求。素手での捕球は打撲や突き指、さらには骨折の可能性もある大変危険な行為だが、大下は意に介さず打球を放った。
大下の打球を左手に当てて弾いた野村は、案の定ともいうべきか左手を負傷。さらに、翌20日にはノックによる疲労からか左ふくらはぎ痛を発症しキャンプを離脱する羽目になった。なお、自らグラブを外した理由は不明だが、後年の報道では極度の疲労や興奮により判断力を失ったのではとの見方がされている。
開幕には間に合った野村だが、キャンプでの猛練習が尾を引いたのか同年は「101試合・.291・6本・42打点・102安打」と今一つで規定打席にも到達できず。また、広島は野村以外にも故障者が続出した影響で「57勝78敗・勝率.422」と優勝した中日と24ゲーム差の5位に沈み、シーズン終了後大下は成績不振の責任を取る形で辞任している。
当時のファンの間でも「広島は伝統的に猛練習するチームだけどさすがにこれはやり過ぎ」、「勝手に暴走して自滅した野村、止めることなくノックを続行した大下はどっちも猛省しろ」と反発は多かったという“素手ノック”事件。現在は当時に比べ過度なトレーニングで力をつける時代ではなくなってきているため、このような光景はもうこの先見られることはないだろう。
文 / 柴田雅人
記事内の引用について
藤川球児氏の公式ツイッターより
https://twitter.com/kyuji22fujikawa