脅迫状はA4判の便箋1枚に、黒のボールペンで手書きされており、消印は高松市内の郵便局だった。差出人は不明で、切手も貼られていなかったそうだ。香川県警は5年前に同県坂出市で発生し、未解決のままとなっていた電波塔倒壊事件との関連も含めて捜査を開始した。しかし、有力な目撃証言は得られず、捜査は早々に難航。結局、坂出の事件も含めて未解決のまま、事件から3年後に時効を迎えることになった。
一体、誰が何のために事件を起こしたのだろうか?最も有力な容疑者像として警察にマークされていたのは、脅迫状にもあるパナウェーブ研究所の関係者だったという。この団体は福井県を拠点とする新興宗教の一つで、白装束を身にまとい、集団で移動する姿が話題となり、当時世間を賑わせていた。彼らの思想は「共産ゲリラがスカラー電波を発しており、身を守るために白装束を着用している」というものだ。この倒壊未遂事件と同じ頃には、警視庁公安部による家宅捜索が行われ、虚偽の自動車登録の疑いで研究所代表が逮捕された。また、2003年8月7日には、研究所関係者で福岡教育大学助教授でもあった男性が変死し、研究所関係者5人が傷害容疑で逮捕されている。度々問題行動を起こし、電磁波と関係が深い団体でもあったことから、電波塔倒壊未遂事件との関連が強く疑われたが、結局証拠は見つからず。脅迫状への関与も確認できなかった。
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では、5年前に起きた事件との関連はどうだったのか。1998年2月20日に坂出市の四国電力讃岐坂出線14号鉄塔が突然倒壊した事件も、犯人は分かっていない。この事件は脅迫状などが無く、いきなり電波塔が何者かによって故意に倒壊された事件だ。警察の捜査で、容疑者像は鉄塔の構造に精通した人物とされた。鉄塔がすぐに倒れないように、ボルトの一部を残すなど細工をしていたからだという。また、複数の工具が使用された形跡があったため、複数犯であることが疑われた。動機は「四国電力への恨み」と見られていたが、2003年の事件は「防災行政無線の中継局」であるため、二つの事件は関連が疑わしい部分もあるという。
パナウェーブ研究所に関しては、「送電線から発生している電磁波が人体に有害な悪影響を与えている」という街宣活動やビラまき等の活動をしていたことが確認されていた。1995年にはオウムによる地下鉄サリン事件が起きた事もあり、警察はパナウェーブ研究所に対して徹底した監視を行ったという。しかし、証拠は全く見つからなかった。パナウェーブ研究所の関係者でないとするなら、一体、誰が何のために事件を起こしたのだろうか。