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モデレーターの市川尚三氏も参加して行われた本イベントに参加したツァイ監督は、第21回東京フィルメックスの特別招待作品として出品された新作『日子(英題:Days)』が公開予定だ。片桐はツァイ・ミンリャンの映画の大ファンであるといい、「ユーロスペースで、台湾映画の面白いのやっているよって言われて拝見したのが最初。『愛情萬歳』(1994年)からずっと見続けています」とコメント。
ツァイ監督が商業映画引退を宣言した『郊遊(ピクニック)』(2013年)で来日の際には、「それを引き留めよう」とイベントに駆けつけたこともあったといい、「(そういう経緯があったからこそ)今日『日子(英題:Days)』を見れた喜びといったら」と頰を緩ませる。
ツァイ監督は片桐が指摘した商業映画引退宣言の真相について、「『郊遊(ピクニック)』を撮り終えた後、いろんな思いがやってきて、観客がチケットを買って見る映画はもう撮りたくないって思ったんです」と振り返ると、「わたしは一作ごとにチケットを街頭で売っていたりしたんです。それは疲れる作業でもありました。商業映画は(ヒットのために)どうしても入れなきゃいけない要素なんてものも出てくる。それで疲れていたんでしょう」と自身の当時の思いを分析。
その上で、「映画を撮りたくないというのは、チケットを売りたくないということ。映画を撮らないと言ったわけではありません。別の方法で映画を撮るという手段は捨てていなかったんです。撮りたいようにしか映画を撮りたくないと思っただけ」と、商業路線ではない作品に力を入れようという意味での商業映画引退宣言だったと説明した。
来年は東京で舞台をやる予定もあるといい、「コロナ禍でどうなるかわからない。でもわたしは東京で舞台をきちんとやりたいと思っています。ぜひコロナが何とか収まってほしい」と話すツァイ監督。「コロナに限らず、映画を見る行為は多様化している。でも内容はどうか。映画館で見るのは単一(どれも似たもの)になっている。Netflixなどでの配信作品に関しても、単一なフィルムしか出て来ていないと感じています。映画館自体新しい形態になるべきだと思っています。もっと、例えば美術館形式のものがあってもいいんじゃないか。そこでアートフィルムをかけるとか」と今後の映画界への思いなども熱っぽく語っていた。
(取材・文:名鹿祥史)