多くのファンのお目当ては、今シーズン限りでベイスターズを退団することになった石川雄洋。スタンドには52番、7番、42番の歴代ユニフォームや、1000本安打記念のTシャツが目を引く。
出番は6回、セカンドの守備から登場。第1打席、第2打席とも凡打に終わったが、9回には先頭打者として12球粘りフォアボールをもぎ取り、同点のホームを踏む。延長10回には3ー5の劣勢ながら、1アウト1ー3塁とホームランでサヨナラの場面で登場し、スタンドは大きく盛り上がる。結果は11球粘ってフォアボールで出塁すると、ルーキー田部のヒットでサヨナラのホームイン。打ち取られた2打席は共に初球を迷いなく振り抜き、3ー4打席はファールで粘る。どちらも“雄洋らしさ”が凝縮された打席だった。ベイスターズラストゲームで「チームの役に立ちたい」と常に語っていた石川は2得点で勝利に貢献し、拍手で祝福するファンの中には、目を赤くする者も多く見られた。
地元の名門、横浜高校出身で2010年には打率.294、盗塁36を記録。2012年にはベイスターズ初のキャプテンに就任し、発展途上のチームをまとめた。ここ数年は出場機会が限られる中、昨年は10連敗と泥沼に嵌るチームを救う2ランを放ち存在感を示すと、8月4日には1000本安打を達成。まだまだチームに必要だと思われていたが、今シーズンは一軍昇格は無しで無念の戦力外。16年間ベイスターズ一筋の生え抜きスターは現役続行を希望し、慣れ親しんだユニフォームを脱ぐ。暗黒時代から陰に日向にチームを支え続けた石川雄洋。憧れるヤクルト坂口智隆のように、もう一花咲かせて欲しい。
取材・文 ・ 写真/萩原孝弘