>>ドイツ、コロナ禍で児童手当ボーナス支給 自動で受給のスピード感に日本人から関心の声<<
そんな日本より一足先に、ドイツではベーシックインカムの導入に着手したようだ。ドイツでは8月中旬からベーシックインカムのトライアルが実験的に行われている。ドイツが実施する今回のトライアル版のベーシックインカムは、選ばれた120人のドイツ国民が3年間、毎月1200ユーロ(約15万円)を受け取れるというもの。120人の選定は、政府が希望者を募り、希望者の中から無作為に選ぶ。18歳以上でドイツに住み生活の大半がドイツである人であれば、誰でもトライアル版のベーシックインカムへの参加を希望することが可能。政府は2021年春から、選定された120人に対してベーシックインカムを支払い、支払われていない人と比較して、時間の使い方や価値観、健康維持面の違いなどがどれほどあるか調査するそうだ。
「ドイツでもこのトライアル版のベーシックインカムは話題になっていました。参加したい人が多く、応募から4日でなんと約120万人の参加希望者が集まったそうです」(ドイツ在住日本人)
移民が流入し始めた1990年代からベーシックインカムの導入を訴える声が少しずつ挙がっていたと、現地ドイツではメディアを通して分析する専門家が多いが、今回のトライアル版のベーシックインカムの導入に大きな影響を与えたのは、芸術家や音楽家などのフリーランサーだろう。ドイツには多くのフリーランサーがいるが、コロナ禍で多くのフリーランサーが仕事を失い、生活が苦しくなったことで、精神的に追い詰められて、自ら命を断つなど万一の事態が起こり得ると知り、ベーシックインカムの必要性を強く訴えた。ドイツ在住のフリーランスのファッションデザイナーが立ち上げたベーシックインカム導入を訴える運動には、47万人以上の署名が集まり、ベーシックインカム導入を後押ししたと言える。
ベーシックインカム導入に前向きなのは、アーティストだけではない。『ドイツ経済研究所』が2019年4月に公表した調査結果によると、ドイツ国民2031人を対象に行ったアンケートでは、約半数の人がベーシックインカムの導入に賛成していたという。
「周りのドイツ人に話を聞くと、確かにベーシックインカムに賛成する人が多いですね。移民を受け入れてから治安の悪さを心配している人も多く、『貧富の差が狭くなれば治安が良くなるから良い』と言う人もいれば、『もともと派手な生活はしないし、中心部に住まないから1200ユーロは十分な額。お金の不安がなくなることはいい』と言う人もいます。さらに、ベーシックインカムがいいかどうか分からないからこそ、『政府が実験的に行うのはいい試み』『論じるためには試してみることは大事』と支持する人も多いですよ。反対派の人の多くは『働く意欲がなくなり経済が回らなくなる』と心配しています」(前出・同)
ドイツのトライアル版のベーシックインカムの実施結果によっては、日本でもベーシックインカム導入論が強まるかもしれない。
記事内の引用について
「Wer kann der Idee eines bedingungslosen Grundeinkommens am meisten etwas abgewinnen? Studie zeichnet Profil der Befürworterinnen und Befürworter」(ドイツ経済研究所)より
https://www.diw.de/de/diw_01.c.618785.de/wer_kann_der_idee_eines_bed...rinnen_und_befuerworter.html