8月27日の福岡ソフトバンク戦、左脇腹の故障で戦線を離脱していた山岡泰輔が約2か月を経て復帰マウンドに登った。3回を投げ、被安打3、失点3。本調子にはほど遠いが、次回登板にも期待の持てる内容だった。試合後、中嶋聡監督代行が言った。
「次回登板? 明日の(山岡の)反応とかを見てから。本人とも相談して」
この山岡の起用法に中嶋代行の野球観が隠されていた。
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そもそも、中嶋代行は「育成」を重視する指導者として知られていた。そんな指導者像に確固たる持論を植えつけたのが、日本ハム時代の2016年、サンディエゴ・パドレスへのコーチ留学だった。
当時の中嶋代行はマイナーを巡回し、メジャーリーグの育成システムを学んでいた。日本ハム関係者がこう言う。
「160キロの速球を投げる若手がマイナーに何人かいて、でも、球団はメジャーにすぐに昇格させようとしませんでした。シーズンを通して活躍するスタミナが養われていないとし、マイナーで先発ローテーションをこなすことに専念させていたそうです」
また、「ピギーバック」と呼ばれる投手起用法にも強い衝撃を受けたという。
ピギーバックとは、直訳すると「抱っこする」などの意味になるが、メジャーリーグでは、1試合で先発ピッチャーを2人使うとか、長いイニングを託せるリリーバーをサポート要員にする起用法のことを言う。どういう場面で用いられるかというと、主に先発ピッチャーが故障明けの初登板になる時だ。
そもそも、故障明けの先発ピッチャーには、長いイニングを任せられない。だからサポート要員が必要になるのだが、先発ピッチャーを2人使った場合、故障明けのピッチャーがもしダメでも、もう一人の先発ピッチャーも投げさせているので、ローテーション上の次回登板には影響が出ない。また、ロングリリーバーを使った場合、リリーバーを総動員させることにならないので、戦力の消耗を防ぐことできる。
18年以降、メジャーリーグでは、リリーフタイプのピッチャーを先発させる「オープナー」が有名になったが、このピギーバックは、先発ピッチャーにローテーションをこなす体力を養わせることを重要視するマイナーでは、ずっと以前から用いられていたそうだ。
中嶋代行は故障明けの山岡に対し、60球前後で交代させることを登板前に伝えており、二番手に荒西祐大を起用している。
「荒西は昨季先発ローテーション入りしましたが、結果を出せませんでした。今春キャンプでも先発ローテーションへの返り咲きをめざして頑張ってきたので、ロングリリーフも可能です」(在阪記者)
山岡が左脇腹痛を再発してしまった場合、荒西の次回先発も視野に入れていたのではないだろうか。“中嶋オリックス”がペナントレースの巻き返しに成功したら、「ピギーバック」を模倣するNPB球団も現れそうだ。(スポーツライター・飯山満)