現代では病原菌やウイルスの存在がすぐに分かるが、洋の東西を問わず、人々は古くから病気を目に見えない何かによってもたらされるものだと考えていた。病気の悪魔や悪神などが人々に悪さをさせているというもので、日本の場合は古代中国の病気をつかさどる鬼神「疫鬼」の伝説が伝わったことも影響している。
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そこで、昔の人ははやり病に悩まされると病気平癒を祈願して様々な「疫鬼」を退治する絵を描いていた。また、今は少し落ち着いたが江戸時代に出現した妖怪のアマビエを「疫病の蔓延を止めてくれるかもしれない」と描いたのも同じような心理によるものだろう。
そんなわけで、ネット上では博物館の公式アカウントから個人まで、様々な人々が「病気に効く」とされた辟邪絵や妖怪の絵などを紹介している。
今回注目を集めたのは、東京は原宿にある浮世絵専門美術館「太田記念美術館」が7月10日に公開したある絵。江戸時代に葛飾派の絵師によって描かれた肉筆画で、日本神話のスサノオノミコト(素戔嗚尊)が武装し、疱瘡神などの病気の神々を退治し、詫び状を書かせている様子となっている。ところが、このスサノオノミコトの足元をよく見ると、まるで現代のスニーカーのようなものを履いているのだ。そこでTwitterでは「神様がハイカラな格好をしている」「スサノオノミコトは現代からのタイムトラベラー?」と注目を集めていた。
サンダルやあるブランドのスニーカーにも似たこの履物は、「浅沓(あさぐつ)」ないしは「毛沓(けぐつ)」ではないかと考えられている。公家装束の一つであり、現代でも神職が履いているのを見たことがある人もいるのではないだろうか。神話の登場人物のため、神職の格好に寄せて描いたのではないだろうか、という意見も存在している。
なお、太田記念美術館では新型コロナのウイルス拡大防止を祈念して、この浮世絵を7月26日まで展示中とのこと。気になる人は足を運んでみてはいかがだろうか。
(山口敏太郎)
参考ツイート
太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art @ukiyoeota
https://twitter.com/ukiyoeota/status/1281460350370476036