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病気の鬼を貪り食う善神「辟邪絵」の「天刑星」

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 現在、世界中で新型コロナウイルス肺炎が猛威を振るっている。日本でも感染者が日に日に増大しており、緊急事態宣言から来る外出自粛など、全国で感染防止対策が行われている。パンデミックの終わりが見えない現状だが、現在Twitter上で、奇妙な生物を描いたイラストが多くのユーザーによって投稿されている。過去にリアルライブでも紹介させていただいた江戸時代の妖怪「アマビエ」だ。

 アマビエは、肥後の国の海に出現した予言をする妖怪で、頭部には長い髪、顔にはくちばし、目は菱型をした人と魚を混ぜたような奇怪な姿をしていた。6年間の豊作の後に疫病が流行ることを予言。その時には、自分の姿を写した絵を見せるように告げて去ったというもの。この通り、アマビエ本人(?)は予言をしただけで、疫病退散の効果を持つわけではないのだが、文脈からは「病気を治す力がある」ように取れてしまうため、当時の人々の間で流行した。そして、時代を超えて2020年の現在、新型コロナウイルス感染症とともに再評価されて、多くの人がアマビエに注目するに至った。

 現代では、病気は病原菌やウイルスが原因と判明しているが、洋の東西を問わず、古くから人々は病気を目に見えない何かによってもたらされるものだと考えていた。病気の悪魔や悪神などが人々に悪さをさせているというもので、日本の場合は、古代中国の病気を司る鬼神「疫鬼」の伝説が伝わった事も影響している。そこで、昔の人は流行り病に悩まされると、病気平癒を祈願して様々な「疫鬼」を退治する絵を描いていた。これが「辟邪絵(へきじゃえ)」である。日本で最も有名なものは、奈良国立博物館所蔵の国宝となっている「地獄草紙益田家乙本」の一部で、天から遣わされ悪鬼を退散させる善神「天刑星」が、子鬼の姿で描かれている「疫鬼」たちを貪り食う様子が描かれている。後白河法皇の蓮華王院宝蔵に保管されていた「六道絵」の一部とされており、12世紀、平安時代末期から鎌倉時代初期に作成されたと考えられている。

 流行当初から比べて猛威を増しているように思える新型コロナウイルス感染症には、これほど強烈なものも必要なのかもしれない。
(山口敏太郎)

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