この説はバッキンガム天体生物学センターのチャンドラ・ウィクラマシンゲ教授によって提唱された説をもとにしている。インフルエンザウイルス等の複数の病原体は宇宙から地球に飛来し、大気の対流によって世界中を回る、そして地上に降り注ぐことで、局地的な流行が発生するという説だ。
過去に起きた新型インフルエンザが大流行した事例で、大都会と人の行き来が少ない奥地で同時に流行したというケースがあり、この時に空気の動きを調べたところ、インフルエンザ感染者数のデータと合致した…というものだ。
また、地球の生命の起源に関する仮説で「パンスペルミア説」というものがある。曰く「原始的な生命体、ウイルスや微生物などは宇宙に広く存在しており、それが地球に到達したことで生命が発生する」というもの。あくまで仮説にすぎないが、火星からも生命の痕跡が発見されたり、過去に宇宙から飛来した隕石からバクテリアの化石らしきものが発見されたこと。また地球に生息している微生物のクマムシは真空中など過酷な環境で生き延びることが可能なのだが、そのDNAを解析したところ、17.5%にも相当する大量の外来DNAが発見されたという報告もあった。
これらから考えると、「新型ウイルスは宇宙からやってきた」という説も正しいように思えてしまうが、証拠が見つからないことなどから仮設の域を出ることはない。
ちなみに「新型ウイルス宇宙飛来説」は今回のCovid-19より前のSARSの際にも唱えられ、さらには医学専門誌の「The Lancet(ランセット)」にも掲載されたことがあった。しかし、現在ではSARSの原因となったウイルスはハクビシンやタヌキなどの野生動物が発生源であることが確認されていることもあって、現在では否定されている。
(山口敏太郎)