6月21日、神宮球場で東京ヤクルト対中日の一戦が行われた。9回表、中日の攻撃が始まる前、与田剛監督がバックネット後方にある放送ブースから「捕手の構えるコースや球種の指摘が聞こえる」と審判団に伝えたのは、既報通り。試合後に改めて確認がされ、各球場に注意し、何かしらの対応を取ってもらうことになったが、こんな“悲鳴”も聞こえてきた。
「甲子園球場だったら、実況アナウンサーと解説者のやり取りが全部聞こえるかもしれない…」
神宮、甲子園球場。学生野球のメッカでもある。両球場ともバックネット後方のスタンド席の中に放送ブースが組み込まれている。
「神宮球場は一階席と二階席の間です。スタンドに観客がいる時は、実況アナウンスがグラウンドに聞こえるなんてことはありませんでした。放送席に窓はありませんが」(スポーツ紙記者)
スタンド席の一部、つまり、グラウンドに近い個所に放送ブースが設けられたのは、学生野球の熱狂をより伝えやすいするためでもある。
甲子園球場の放送ブースには“ウラ”があるのだ。同球場は2007年から3年を掛け、大型改修工事が行われた。その際、ネット裏のスタンド内にあった放送席、記者席を移動させるという情報も駆け巡ったが、“現状維持”となった。
「神宮球場はボックスのように仕切られているのでまだマシです。他球場の記者席は専用の部屋があって、そこが記者室として使われています。」(前出・同)
甲子園球場はスタンド席の一部が“記者席”となっているのだ。
甲子園球場を本拠地とする阪神の球団スタッフがこう言う。
「大型改修工事の際、他球場のように放送ブースの全ボックス化と、記者席を球場の屋内に移動させる話があったのは本当です。でも、実現されませんでした。いや、できなかったんです」
その理由というのが、ちょっと驚きだ。甲子園球場、つまり、高校野球を担当する取材陣から「高校生が猛暑の中、汗と涙を流している時に、ワタシたちが冷暖房のある部屋にいるなんて、申し訳ない」なる申し出がされたのだ。
メディア用に提供された控え室はある。また、NHKの高校野球中継ではバックネット後方にあるボックス型の放送ブースが使用されている。実況中継、取材活動の全てがスタンドで行われているわけではないが、甲子園球場ならではの苦労はある。
阪神戦のテレビ放送は関西方面では欠かすことができない。そのため、大阪方面で活躍しているプロ野球解説者は、虎ファンの大声援の中で試合分析をしなければならない。その苦労を聞くと、一方の耳に挿したイヤホンがなければ、隣に座った実況アナウンサーとの会話も成立しないほどだという。
神宮球場の放送ブースでの会話が聞こえるとなれば、甲子園球場のスタンド内の放送席は筒抜けだろう。矢野阪神は連敗スタートとなった。甲子園に帰還するのは7月7日だが、試合中、解説者たちの“チーム批判”が聞こえるなんてことにならなければいいのだが…。