トラブルになったのは、平山秀幸が監督した「黒い看護婦」(フジテレビ系)というドラマで、放送日が変わったことにより、92分のドラマを74分に削り放送することに。これにより、平山監督ほかスタッフが反発し結果、監督名はノンクレジットとなったという騒動だ。
「黒い看護婦」は、大竹しのぶ演じる主人公が、同じ看護学校に通っていた級友をあの手この手でマインドコントロールし、保険金殺人を企てていくというストーリーであった。
実はこの話は実話であり、事件は21世紀になってすぐの2002年に発覚した。
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舞台は福岡県久留米市。ドラマで大竹しのぶが演じていたYという女性は小さい頃からの貧乏暮らしで金銭欲が強かった。1998年頃、Yは同じ看護学校に通っていた3人の級友と出会った。3人は夫の浮気や職場いじめなど様々なトラブルを抱えており、人一倍金に執着し虚栄心も強かったYは、3人を言葉巧みに支配し洗脳。彼女らの親族にかけられた保険金を奪おうと考えたのだ。
その手口は、看護師の知識を使ったものだった。
第一の犠牲者となった、3人の看護師の一人であるAの旦那で、睡眠薬入りのビールを飲ませ、静脈に空気を注射して殺害した。
第二の犠牲者は看護師Bの旦那で、男性は当初、急性アルコール中毒で死亡したと考えられていた。しかし、Yが逮捕された際、睡眠薬入りのカレーライスを食べさせていたことがわかった。
睡眠薬入りのカレーを食べた男性は意識を失い、4人が力を合わせて鼻から1Lのウイスキーを流し込んだのだ。だが、この状態では第三者が鼻からアルコールを流し込んだことがわかってしまう。そこで4人は注射器で水を注射。違和感のない程度にアルコールを分解させアルコール中毒を引き起こしたのである。
Yはさらに、糖尿病を患う看護師の母親に大量のインスリンを投与させ殺害しようとした。
しかし、このインスリン計画は失敗し、一連の悪行が明るみに出て、4人は殺人罪などで逮捕されたのだ。この時、Yが手にしていた保険金は2億円を超えていたという。
そして、Yは事件発覚から約10年後の2010年、殺人罪および恐喝罪などで死刑が確定。フジテレビドラマ「黒い看護婦」が放送された翌年の2016年に死刑が執行されている。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)