明治~昭和にかけては、日本中の村には(神職・神主問わず)多くの神様とのつながりを持つとされる人物がおり、多くの人間を救っていたという。
平成時代に入っても、祈祷師は一部コミュニティー内では絶大な力を持っており、多くの人間が祈祷師との接触を図っていた。
1995年(平成7年)7月5日、福島県須賀川市のある住宅街で47歳の女性が逮捕された。彼女は市内で1990年頃から、自宅で「おがみや」と呼ばれる宗教活動を開始。最初は夫婦で活動していたようだが、夫は92年頃に失踪。以来、一人で教祖として地元で信者を獲得していった。
主な信者は持病に苦しむ市民が多く、彼女は「治らない病気はキツネの霊が憑いているため」と悪魔祓いの儀式を日常的に行っていたという。
最初は拝むだけの儀式だったが、その内容は次第にエスカレートし、太鼓のバチなどを使い、信者を殴りつけていたという。
そのような乱暴な儀式ではあったが、信者の数は途絶えなかったという。
儀式は昼夜問わず連日連夜行われ、次第に噂を聞きつけた遠方者も儀式に参加していたという。
しかし、お祓いが暴力行為へと移り変わっていった「おがみや」は徐々に崩壊を迎え、最終的に持病を抱えていた数名の信者たちは教祖と同居するようになり、また暴力行為を日常的に行っていたために6名が死亡した。
この6名はその後、「蘇生」の儀式のため祈祷部屋へ死体を置いていた。しかし、当然ながら死体は蘇生できず腐っていき、同時期に「家族が帰ってこない」と通報を受けた警察により、教祖の悪事が明らかになり、逮捕となった。
教祖は事件から7年後の2002年に死刑判決を受け、2008年に確定。2012年に執行され、戦後日本では10人目の女性死刑囚となった。
奇しくも事件の発覚した1995年は、日本中がオウム真理教による一連の凶悪事件におびえていた時代でもあり、新興宗教に頼らなければならない不安定な時代を象徴した事件と言えよう。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)