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元恋人の白骨死体と7年間同居した男@大阪市阿倍野区

 2017(平成29)年10月26日、大阪市阿倍野区昭和町にあるマンションのベランダで、下着姿の女性の白骨死体が見つかるという事件があった。現場は地下鉄御堂筋線昭和町駅から徒歩1分という立地条件のいい場所で、人の往来も多い都心だった。にもかかわらず、周囲は「異臭に気付かなかった」(同じマンションの住民)と首をかしげた。

 この部屋の借主が、後に逮捕される無職の河本智旭被告(当時28歳)だった。河本は月4万2000円の家賃を数年間滞納していた。家賃の保証会社が変わって、悪質な滞納者について督促に乗り出すことになり、社員2人が明け渡し作業のため部屋に入ったところ、白骨死体を発見したのだった。
「家賃を滞納していたぐらいだ。そう遠くへは行けまい」

 大阪府警阿倍野署ではそう踏んで、徐々に捜査の網を縮めていき、翌日朝に現場から約1キロ離れたファストフード店で食事をしている河本を発見。任意同行を求めて事情聴取したところ、犯行を認めたため逮捕した。

 被害者は、河本が高校時代から付き合っていた1学年上の比楽あゆみさん(享年22)。あゆみさんは同市浪速区で生活保護を受けて暮らしていたが、河本と同棲することになり、2010(平成22)年12月10日に、河本と共に浪速区役所を訪れてから行方不明になっていた。

 取り調べで、河本はあゆみさんの殺害を認めたものの、「頼まれて殺した」と言い張った。
「オレはあゆみの希望通りにしただけ。あゆみが望むことなら何でもしてやりたいと思っていた。オレも後追い自殺するつもりだったが、死にきれなかった。遺体は風呂場に置いていたが、臭いが気になるようになったため、毛布で巻いてベランダに移した」(河本の供述)

 さらに驚くべきことは、その5年後に河本は当時23歳の元妻と結婚し、同じ部屋で新婚生活を送っていたことだ。
「彼女とは立場が逆だった。自分が“専業主夫”として家事を担当し、彼女が外に出て働いていた。彼女には『下水の臭いがするから、ベランダの窓は開けるな』と言っていた」(河本の供述)

 裁判所は「被告人はこれまで、他人から『死にたい』と言われたことはないと言っており、目の前で遺書を作成されるなど、被害者から『殺してほしい』と言われたのを本心だと誤信した可能性がある」として、嘱託殺人罪を適用し、懲役5年6カ月の実刑判決を言い渡した。

 あゆみさんに「死にたい」と言われ、河本の心中に「何とかしてあげたい」という気持ちと「楽にしてあげたい」という気持ちが同時に湧き上がり(ダブルバインド)、「楽にさせてあげることが自分にできることだ」という倒錯愛が持ち上がり、今回の事件につながったらしい。こうして社会を騒がせた怪事件は収束を迎えた。

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