そんな氷川。今となっては忘れられているが、名付け親はビートたけしだといわれているが……。
「表向きにはそうです。が、たけしさんが命名許可を出したという方が正解かもしれません。氷川さんは、長良プロダクション元会長の長良じゅんさん(故人)に発掘されましたが、長良さんはたけしさんと同じ東京・浅草出身で、昭和のエンタメ界を支えた者同士、親しかったのです。長良さんが氷川さんをたけしさんに紹介したとき、すでに『氷川きよし』という芸名でデビューすることが決まっていました。今後のPRのため、たけしさんが命名したと事後快諾したのです」(古株の芸能ジャーナリスト)
たけしといえば、かつての愛弟子・たけし軍団のメンバーほとんどを、ひらめきと遊び心だけで命名している。テレビメディアに対応できない放送禁止ワードを、あえて使用したものが多かった。そんななか、自身の番組「たけしの等々力ベース」(BSフジ)の改名企画がきっかけで、奇跡的に売れた者もいる。大ブレイク中の男女若手漫才師・納言の薄幸だ。
「薄幸さんは、関東圏のあらゆる駅をディスりまくるネタと、酒とたばこを愛するやさぐれキャラが人気。番組出演の際、『初めて会った印象が、幸が薄そうだから』という理由で、たけしさんに新しい芸名を付けてもらいました。ほかに、肉便器実子、ビーチクロイクー、インリンランランなど、ギリギリアウトな名前が候補に挙がったそうです」(先の芸能ジャーナリスト)
同番組からは、「ジュリアナの祟り」というトランスポップロックバンドも誕生している。同バンドが、それまでに経験していた負の連鎖を断ち切るという意味で、たけしが捧げた。しかし、いっこうに芽が出ず。令和への改元を機に、「エナツの祟り」に改名。いまだ浮上のチャンスを見いだせないが、そろそろたけし効果にあやかりたいところだ。
演歌、お笑い、バンド。世界のキタノは、実に手広い。
(伊藤由華)