今季、中日ドラゴンズがペナントレースの「台風の目」になると見る関係者は少なくない。昨季は5位と低迷したが、若い投手が多い。“未知数”の投手と故障組の復活が重なれば、「投手王国」に一変するからだ。
「与田剛監督は大野、柳の先発ローテーション入りは明言していますが、3番手以降はまだ競争の段階。とは言っても、人材難ではなく、絞り切れていないだけ」(スポーツ紙記者)
注目は“甲子園の優勝投手”だ。一連の新型コロナウイルスの影響でセンバツ大会が中止になったからか、決勝戦バッテリーにも関心が集まっている。
「小笠原慎之介のピッチング内容が変わったような印象を受けました。シーズンを通じて、こんな強気なピッチングをされたら、他球団は手が出ないでしょうね」(プロ野球解説者)
その強気なピッチングを演出したのが、ドラフト4位の新人捕手・郡司裕也(慶大)だ。郡司は「開幕マスクも!?」と伝えられるほど、チーム内外から高い評価も受けている。
「肩の強さとディフェンス面なら、加藤匠馬(27)でしょう。打撃面を含めた総合的な能力なら、郡司」(前出・同)
昨季、正捕手を決め切れなかっただけに、与田監督が思い切って郡司を使ってくる可能性も高い。しかし、郡司がリード面でも並の新人ではないことを証明したのは、小笠原との2度目のバッテリーを組んだ千葉ロッテ戦だった(3月15日)。
「内角を強気に攻めさせていました。走者を出しながらも、強気の姿勢を崩さなかったと言うか、要所でしっかりと抑え込んでいました」(ベテラン記者)
8安打を浴びながら、6回2失点。先発ローテーション入りをほぼ確実にしたと言っていいだろう。そもそも、郡司が小笠原に強気の内角攻めをさせた背景に、2015年の夏の甲子園大会があった。当時、小笠原は優勝校・東海大相模の出身で、決勝戦の先発マウンドを任されている。郡司はその対戦校・仙台育英の4番バッターだった。
4年の歳月を経て、決勝戦でぶつかったピッチャーと4番バッターが、プロで同じユニフォームを着てバッテリーを組むのも不思議な縁である。郡司の記憶の中には、小笠原のストレートのキレ味がインプットされていたのだろう。また、高校卒で中日入りした小笠原は“プロの洗礼”を浴び、「ストレートだけでは通用しない現実」を突き付けられ、知らないうちに変化球でかわすピッチングになっていたのかもしれない。
「バッテリーを組むのは2度目なので、試合前、2人で色々と話し合っていました。2ストライク後に変化球ではなく、直球で押すスタイルでも通用することを小笠原は認識したと思います」(前出・同)
甲子園で対決した経験がプラスに転じたのであれば、与田監督にとっても有り難い話だ。試合後、小笠原、郡司ともに甲子園時代の質問を受けたが、多くは語らなかった。視線はこれからのプロ野球人生に向いていたが、こういう質問が出るのも、センバツ大会が中止になった影響だろう。“甲子園スター”がペナントレース序盤戦のカギを握りそうだ。(スポーツライター・飯山満)