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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★イベント中止は正しいか

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提供:週刊実話

 小池百合子東京都知事は2月21日に会見し、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、東京都が主催する参加者500人以上の大規模イベント、あるいは飲食の提供を伴うイベントを2月22日から3月15日の3週間、延期か中止すると発表した。加藤厚生労働大臣が、イベント開催に関しては、主催者が必要性を慎重に判断すべきだとの方針を示したのを受けた形だ。

 小池都知事の決断を受けて、2月24日に2万人の参加者を見込んでいたパラリンピックスポーツの普及イベント「ビヨンド・スタジアム2020」などが中止されることになった。

 小池都知事は「感染拡大を防止する重要な局面だ。都民にもご理解いただきたい」と語った。当初の水際での封じ込め作戦が失敗し、市中感染が疑われる感染者が出始めたため、新たな封じ込めのための包囲網を敷こうというのだ。

 発想自体は間違っていないと思うが、私には効果があるのか疑問だ。いくらイベントを止めても、電車もバスも飛行機も船も、通常運行している。ラッシュ時の通勤電車は、濃厚接触の可能性が高い。大学も大教室の授業は500人以上の規模だから、大規模イベントと一緒である。本当に感染拡大を食い止めるのであれば、国レベルで一斉休業をしなければ意味がないのだ。

 イベント中止には、もう一つ大きな問題がある。それは、感染者が非常に少ない状態でないと、意味がないことだ。すでに多くの国民が感染してしまっている状態では、封じ込めをやっても意味を持たない。

 新型コロナウイルスは、無症状の人からも感染することが分かっている。また、特効薬やワクチンがないのに致死率が低い。つまり、大部分の人が自らの免疫力で自然治癒しているということだ。発症しないまま、治癒してしまう感染者がたくさん存在する可能性は、否定できないだろう。

 だから、いま一番必要なことは、国民にどれだけ感染が広がっているのかを把握することだ。それは難しいことではない。無作為に選んだ国民にウイルス検査をすればよい。

 これまでは検査体制の制約から、調査を実施することは困難だった。しかし、クルーズ船乗客の検査が一段落し、1日3000人以上の検査体制が確保できた今なら、1000人程度の抽出調査は可能なはず。これぐらいでも、ある程度のことは分かる。例えば、1000人の調査で、感染率が1%だったとすると、統計学的には95%の確率で、本当の感染率が0.4〜1.6%に収まることが分かる。

 感染がどれだけ広がっているのかは、国民の大きな関心事だし、調査に膨大なコストがかかるわけでもない。それにもかかわらず、なぜ政府は調査をしようとしないのか。

 もしかすると、政府は調査をして、高い感染率が分かると、東京オリンピックが中止になることを恐れているのかもしれない。ロンドン市長選挙では、複数の候補者が東京でオリンピックが実施できないときのロンドン誘致を掲げている。オリンピックは利権の塊だから、中止というのは、利権を持つ側の人にとって、絶対に許されない選択だ。

 国民の安全・安心と利権を天秤にかけると、利権のほうが重いというのが、残念ながら、日本の置かれた現状なのかもしれない。

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