死体は腐り始めており、顔の判別は難しかったが、着ていた服から女の子であると推定された。目立った外傷こそ無かったが、奇妙だったのは、女の子の死体は毛布で丁寧にくるまれており、中には、死体と共にぬいぐるみや哺乳瓶などが入っていたのだ。
その丁寧な仕事ぶりは、殺してしまったが故の証拠隠滅ではなく、死者を弔うために仕方なく埋めたようにも見えた。
やがて、女の子の持っていたぬいぐるみから、最近、近所で姿が見えなくなっていたR子ちゃんであることがわかり、R子ちゃんの母親であるA子とその内縁の夫のB男を殺人と死体遺棄で逮捕した。
この2人、夫が24歳、妻が22歳と若かったものの、妻のA子には2人の子供がおり、2人は前夫との間にできた子供だった。
A子はB男と仲良くなったが、子供嫌いだったB男は子供達に毎日のように殴る蹴るなどの虐待を繰り返した。1人目は暴行後にタバコの火を押し付 けるなど徹底的に痛めつけたところ、見かねた近所の主婦が警察署に通報。児童施設へ預けることになった。
ゆくゆくはR子ちゃんも施設に行く予定だったが、虐待の事実が周囲にばれてしまったため、施設が引き取る前に徹底に痛めつけることを決意。そして、死んでしまったという。
B男は我が子ではないため、何知らぬ顔だったが、A子は自分の腹を痛めて生んだ子供ということもあり情が移り、しばらく埋めずに死体と添い寝をしていたという。
しかし、時期は夏場という事もあり、次第に死体は腐って行き、異臭を放ったため、埋めることを決意。「せめて綺麗な格好で弔いたい」と、愛用のぬいぐるみと一緒に埋めることにしたが、この母親としての情が身元を明かす遠因となり、逮捕となったのだった。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)