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蝶野正洋の黒の履歴書 ★新日本プロレスの海外戦略

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提供:週刊実話

 2月28日に後楽園ホールで開催される『プロレスリング・マスターズ』に、TEAM2000を率いる形で俺も参戦することになった。会場には(アントニオ)猪木さんも来場するということもあって、すでにチケットはソールド・アウトみたいだね。

 マスターズに限らず、各団体が頑張っているから、プロレス界が盛り上がってきているように感じるよ。

 ただ、今年は東京オリンピックがあるから、プロレスも含め、イベントやライブといった興行系はすべて影響を受けると思う。新日本プロレスも、毎年8月に開催していた「G1クライマックス」を、オリンピック終了後の10月にスライドすることを発表しているしな。

 そんな事情もあって、今年の新日本プロレスは国内よりも、海外戦略を重視しているみたいだね。国内マーケットは飽和してきているし、試合数も上限がある。だから、必然的に海外に進出しなくちゃならない。新日本プロレスの親会社であるブシロードが、女子プロレス団体のスターダムを買収したのも、海外戦略の一貫だと思うよ。

 アメリカのプロレス団体WWEも世界進出には力を入れている。こないだWWEの連中と話したんだけど、彼らはテレビ中継が入らないハウスショーの興行を「ワールドツアー」と称して世界中でやっている。それで現地のスターを作っていくという戦略なんだよね。

 例えば、インド市場を取りに行こうと思ったら、まずインド人のレスラーを売り出していく。以前、新日本プロレスに参戦していた、インド人のジャイアント・シンっていうレスラーがいるんだけど、彼はいまWWEにいて、プロモーターみたいな立場でインド市場を盛り上げようとしている。

★動画配信でネックになる新日本プロレスの映像権

 だけど、ハウスショーはハコでやる興行だから、売上げの上限が見えてしまう。それを補うのが、インターネットでの動画配信ビジネス。動画配信なら世界中がマーケットになるし、必要以上の投資がいらないから利益率がいい。実際、収益がとんでもない数字になっているらしい。

 新日本プロレスも、そこを追いかけているんだけども、まだまだWWEの規模とはケタが違うようだ。

 WWEは、90年代前半ぐらいからテレビのマーケットの取り合いをやって、いろんな団体を買収していった。その頃から、これからくるネットの時代を見込んで過去の映像を買い込んでたんだよ。そのアーカイブは膨大で、いまやものすごい価値がある。

 新日本プロレスがWWEと比べて不利なのは、映像の権利が一本化できてないことだよね。新日本プロレスの中継映像については、テレビ朝日も権利を持ってる。だから、配信ビジネスで世界進出するといっても、映像権利や肖像権が共有になってるから、どちらか一方の判断で決められないことがあるんだよ。だったら新日本プロレスとテレビ朝日がちゃんとしたパートナーシップを組めばいいんだけど、契約が複雑でそう簡単にはいかない。

 日本が世界とやり合おうというときに独特の古いしきたりに縛られるっていうのは、プロレス業界でも同じなんだよ。

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蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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