深田恭子主演のドラマ『ルパンの娘』(2019年7月~9月放送)など、いつの時代も日本人は「女盗賊」にロマンを求めるものだ。
大正13年(1924年)、東京都千代田区にある丸ビル(丸の内ビルディング)は関東大震災などで行き場を失った不良少年・少女の溜まり場となっていた。当時の東京は夜になると、不良少年や少女たちが毎日のように喧嘩に明け暮れており、小さなスラム街の様相だったという。
そんな丸ビルにたむろする不良少年たちを取り仕切っていたのが、「四谷ハート団」と称する半グレ集団だった。そして、この「四谷ハート団」のボスとして君臨していたのが「ジャンダークのおきみ」だった。
このジャンダークのおきみ、僅か19歳ながら類まれなるリーダーシップを発揮し、四谷ハート団をまとめ上げる一方、その美貌は当時の裏社会でも有名であったという(ジャンダークの意味は恐らく「ジャンヌ・ダルク」が訛ったものと思われる)。
さて、このジャンダークのおきみだが、昼間は表の顔を持っており、なんと丸ビル内にある東亜貿易商会に勤めるOLであった。
しかし、その美貌は丸ビルの中でも特に目立っており、オフィス内でも数多くの男性との性的関係が噂されていたという。
その結果、ついたあだ名が「丸ビルの看板娘」であったが、夜になると「ジャンダークのおきみ」に変身。丸ビルを占拠する女ボスとなっていたのだ。
まるで漫画のようなお話である。
なお、ジャンダークのおきみは1924年12月9日に恐喝などで逮捕。仲間と洋食店で食事を摂っている最中に捕まるという実にあっけないものだった。
現在、「ジャンダークのおきみ」は、知る人ぞ知る伝説的な女アウトローとして、令和の今日まで名前が語り継がれている。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)