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特選映画情報『五億円のじんせい』〜“童貞売り”“添い寝カフェ”ヤバいバイトをしつつ生きる意味を考える!

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提供:週刊実話

配給/NEW CINEMA PROJECT 渋谷ユーロスペースほかにて公開
監督/文晟豪
出演/望月歩、山田安奈、森岡龍、松尾諭、平田満、西田尚美ほか

 GYAOとアミューズが新時代を担う才能を発掘する『NEW CINEMA PROJECT』の第1回グランプリに輝いた作品の映画化。切り口のユニークさが受賞の理由か。文監督も脚本の蛭田直美も今後が楽しみな新鋭だ。最近、凶悪事件の犯人に対しての「死ぬなら勝手に1人で死ね」というコメントが物議を醸した。それとは直接は関係ないのだが、こちらは主人公に対する「死ぬなら五億円稼いでからにしろ」という謎のアカウントが発端なのだ。

 17歳の少年・高月望来(望月歩)には、6歳のときの心臓移植手術費のカンパ五億円という“負債”がある。もちろん返す必要はないが、その呪縛に耐え切れずSNS上で自殺を宣言する。すると「借金チャラにしてから死ね」というアカウントが届き、意地になった望来は「じゃあ五億円稼いでから死んでやる」と、旅に出る…。

 要するに「若いうちの苦労は買ってでもしろ、旅に出ろ」、「人は誰かに生かされている」といった至極真っ当な“人生訓話”なのだが、そこにたどり着くまでの見せ方が巧みだ。ありきたりのヒューマン映画仕立てにしていないところが味わいどころ。例えば、まだ17歳だと保護者の承諾が必要なため、働くところ、泊まるところにも一苦労。おまけにナケナシの通帳残額30万円は誰かに引き下ろされる始末。結局ホームレス男性の世話になったり、ヤバい闇仕事しかなかったりする。熟女に童貞を売ったり、添い寝カフェでさえないOLのお相手をしたりでゼニを稼ぐあたり、キレイ事じゃないのが実に説得力がある。人々の善意で救われた命にふさわしい人生を歩まなくちゃ、と金縛りになっていた主人公の心情が痛々しい。

 脇では森岡龍が演じる闇仕事のブローカーみたいな謎の男がイイ味。主人公に興味を持ったのか、いろいろな仕事を世話する。まるで密やかな“守護天使”のように。「どうしてそんなに良くしてくれるんですか?」という素朴な疑問に対し「世の中には優しい人と優しくない人がいるんじゃない。優しくしてやりたくなる奴とやりたくない奴がいるだけだ。お前は前者なんだよ」と。確かに、演じる望月歩クンは構ってやりたくなるタイプ。監督の演出プランによると「ラブリーに見えるように」だそうで、なるほど。

 消えた30万円の真相、謎のアカウントの正体などのミステリーも孕みつつ、ヒューマンなラストへ…。人生そんなに力んで生きなくてもいいんだよ、というメッセージは、いろんな人に助けられユルユルな人生を送って来たボクには、妙にササったねえ。
 《映画評論家・秋本鉄次》

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