「ブサマな投球はできないと思った…」
孫オーナーがホークスの試合を“ナマ観戦”することはほとんどない。ソフトバンクグループの創業者であり、実業家として多忙な毎日を送っているからだが、「グループ社員1万人を引き連れての観戦」となれば、「勝たなければならない」と緊張したのは、杉内だけではなかった。しかし、その孫オーナーが「これからのホークス」をどう考えているのか、その本心は誰も分からない。
翌7日、都内ホテルで開かれた『プロ野球 オーナー会議』を孫オーナーが欠席したのは、既報通り。千葉ロッテ、阪神、楽天も“代役”を送り込んでおり、「昨夜の観戦は何だったの!?」と、首を傾げる取材陣も少なくなかった(千葉ロッテは『オーナー代行』の正式な肩書を持つ重光昭夫氏が出席)。
「6日の観戦はソフトバンク本社の創業30周年事業の一環だと話していたし、それ以上もそれ以下もないのでは? ホークスのことは王貞治球団会長に全てを託すつもりなんだと思います」
ライバル球団の職員がそう推測する。
かつて、孫オーナーは「米ワールドシリーズ覇者と、日本シリーズ優勝チームを戦わせ…」、「サッカーのトヨタカップのように(当時)、クラブチームの世界一を決めるイベントを」と、大胆な野球ビジネス論も語っていた。
「補強にお金を掛ける意義とか、人材育成、FAなどに関する考え方はナベツネさん(渡辺恒雄・巨人球団会長)に似ているんです。でも、話し方はソフトだし、反対者の意見にも耳を傾けるタイプですね。ソフトバンクが球界に参入してきた04年オフ、新生ホークス(ソフトバンク)は巨人と共闘して何か大きなことを仕出かすんじゃないかと恐れられていました」(前出・ライバル球団職員)
オーナー会議を出席し続ければ、球界を牛耳ることもできたのである。
しかし、ダイエー時代も知る某ベテラン選手は、こうも評していた。
「以前のオーナーは何かあると、すぐに駆けつけてくれました。でも、今のオーナーはノータッチ。お金のことでは絶対に選手を不安にさせないけど(球団経営)、チームとは一定の距離を置いたまま。口を挟んでくるオーナーもイヤだけど…」
孫オーナーは6日に好投した杉内を労っていたが、今後の観戦予定は“未定”だ。
「いや、孫オーナーは本当に多忙だからプロ野球のことに長く時間を割けないんです。本人は選手、首脳陣、球団職員たちに『ホークスのことを思っているんだ』というアピールできたと喜んでいましたよ」
そんな前向きな声も聞こえてきたが…。
王会長に託し、自身は後方支援に徹すると考えているのだとしても、せめて新入団選手の会見や球団納会には顔を出すべきだろう。チームとの距離を縮めたがらないオーナーの性格を知ってか、「次の御前試合があるとしたら? 緊張するからなあ〜」と苦笑いする関係者も少なくなかった。