大河ドラマ『江』では、史実では10歳前後であるはずの登場人物が、どう見ても20歳を超えた大人にしか見えないとの声があがっている。調べたら、第14回「離縁せよ」の江は史実では12歳前後だが、江を演じる女優は24歳であった。
このことは何を意味するのか。
まずは時代というものを考えてみたい。戦国時代の人々がどのようにたち振る舞ったのかについては、映像や音声資料は残されていない。従って、文献、絵画、彫刻等が中心となるが、文献では話し言葉が書き言葉に変換され、徳川時代になると、織田や豊臣の人間たちは、徳川ありきの色をつけられて記録される。絵画や彫刻等でも、「引目かぎ鼻」という源氏物語絵巻まで遡る伝統的表現が中心となる。「引目かぎ鼻」で表現された10代の女性たちは、現代の感覚からすると、20代、30代に見えることもある。
ここで路頭に迷うわけだが、こういう時は先人の知恵を借りるのが得策。
『時をかける少女』(筒井康隆)は、2600年代の未来から、未来人が、(未来人にとっては現代的な)ミッションを持って、現代にやってくる物語だ。大学生である未来人は、『ほんとうは今、なん歳なの?』と現代人から問われ『十一歳だ』と答える。現代人は『なんですって!』と驚がくする。
現代から見た未来にギャップがあるとすれば、現代から見た過去にもギャップがあることは十分に考えられる。
実際に、第14回「離縁せよ」では、江の姉・初の手紙のエピソードが描かれていた。現代人の感覚からすると、3姉妹の長女である茶々が懸念したように、手紙など出しても羽柴方の網の目にひっかからないわけがないとあきらめてしまう。しかし、羽柴方のチェックにかかったのかどうかは謎のままだが、ミッションを帯びて現代から過去へと時空を超えた我らが初は、あきらめてはダメだと主張し、茶々の心を動かした。
大河ドラマ『江』では、3姉妹の人生が深刻度を増しており、目が離せない展開となっている。江はどのような「戦国」を生きるのか。江が生きる「戦国」とは何なのか。江は何を求め、何を見出すのか。
日曜の午後8時、3姉妹が、時をかける。(竹内みちまろ)