やはりこれが血の力か。じわじわと、そして確実に、カイゼリンは大舞台の匂いが近づいてきたことを嗅ぎ取っていた。
「この2戦、時計、内容ともに良かったね。芝の二千を続けて2分0秒台で走り、勝てたことに価値がある。それも男馬を相手にね」
松田国師は余裕たっぷりにうなずいた。
最初は地味だった。デビューは昨年11月。父内国産限定の新馬戦にもかかわらず、8番人気。結果は4着。続く未勝利戦も4番人気で5着と、ここまではどこにでもいる馬でしかなかった。
しかし、暮れから春にかけてのパワーアップを図った休養がカイゼリンを目覚めさせた。師の言う通り、ここ2戦は好時計の連勝。好位、あるいは中団から自在の立ち回りで牡馬を蹴散らし、クラシック戦線に乗った。
父はダービー馬アドマイヤベガ、母はダート重賞を中心に13勝した名牝ブロードアピール。文句なしの名血だ。
師が手掛けた母は短距離馬だったが、「母親はピッチ走法だったけど、子供は父の血が出ているのか、柔らかな走りをする。その分、距離が持つんだね」と分析した。
16日の1週前追いは栗東坂路で53秒6→38秒9→12秒9。「強い負荷をかけても耐えているし、1戦ごとに成長を感じる。牝馬同士なら重賞でもと思わせるし、権利を取ってオークスへ」
昨年はダイワスカーレットを擁しながら、オークスは出走回避。遅れてきた大物で、松田国師がその分を取り返す構えだ。