試合後、顔面を汗と鮮血で染めた神取忍は、実に晴々としていた。今月30日で50歳になる神取が11日、スペシャルイベント『Mr.女子プロレス神取忍 生誕半世紀イベント SUPER LEGEND』を東京・両国国技館で開催。“闘いの聖地”後楽園ホールでさえ超満員にできない女子プロの現状を鑑みると、両国進出は大博打だ。しかし、ライブとプロレスのコラボ、昭和を支えたレジェンドをリングに上げるプレミアを続出させ、ビッグマッチを成功させた。
“地下アイドル”として人気上昇中の仮面女子からはアーマーガールズが、代表曲『夏だね☆』など3曲のパフォーマンスで魅了。神取と同じLLPW−X所属の井上貴子はオリジナルナンバー『JEWEL』、長与千種はクラッシュ・ギャルズのデビュー曲『炎の聖書(バイブル)』、元おニャン子クラブの城之内早苗はソロデビュー曲『あじさい橋』を熱唱。さらに、元ビューティ・ペアのマキ上田が、パートナーをジャッキー佐藤(故人)から城之内に変えて、大ヒットソング『かけめぐる青春』を歌って踊った。サンプラザ中野くんは、『大きな玉ねぎの下で』など2曲を熱唱。メインイベント前の国歌斉唱は、SHOW-YAの寺田恵子が務めた。
VTR出演は、アニマル浜口&浜口京子の親子、神取と同じ中学校出身のゆず。ももいろクローバーZは「神取クローバーZ」を名乗って、おなじみの“Zポーズ”を決めた。
メインイベントに出場した神取は、極悪同盟のダンプ松本、藤原喜明とタッグを組んで、天龍源一郎、すでに現役を退いている長与千種、堀田祐美子と対戦。14年前の一騎打ちで、顔面をボコボコにされた天龍と対峙した瞬間は、「一瞬、あの悪夢がよみがえった」(神取)が、情け容赦ないグーパンチに耐え、竹刀でめった打ちにするという暴挙で反撃。ラストは、チョップからのサソリ固めで猛攻を仕掛けてきた長与の首をガッチリ捕え、16分18秒、スリーパーホールドで締め落とし、激勝した。
同カードは、ファン投票によって実現。9年前に引退した長与は、今年3月に開催した自主興行で復帰。今月6日に地元・長崎県で開催した自主興行にもエキシビションマッチで出場しているが、引退後にベテラン男子レスラーと対戦するのは初めて。今年は神取と同じく50の大台に乗るだけに、「(誕生日を迎える12月に)50歳になって、初めてみなさんに夢をかなえていただいた。プロレスの良さって、ミラクルを起こせるところ」と語り、今後については、「出るとも出ないとも言わないけど、個人的にはバックアップしたいです」と、新団体・MARVELOUSの発足準備に専念したい意向が強い。
いっぽう、1度も引退することなく、選手生活29年目に突入した神取は、2016年でプロレス人生30周年を迎える。「このぐらいの規模のところで考えたい」と、早くも両国同様のビッグマッチ開催を視野に入れる。女子プロレスラーでは先輩のジャガー横田が生涯現役宣言をしているが、神取も「一寸先は何があるかわからないけど、やれる以上はやりたい。自分の満足もそうなんだけど、みんなにどれだけ影響を与えられるか」と、まんざらでもないようだ。(伊藤雅奈子)