冷淡にして、潔い“割り切り”こそが、彼の命脈。大型特番や新番組の司会者候補に、必ずといっていいほど名前が挙がる。そして今春、またしても運を手にした。およそ22年間続いた“土8”枠のフジテレビ看板バラエティ『めちゃx2イケてるッ!』の後継番組『世界!極タウンに住んでみる』のメインMCに抜てきされたのだ。
信じられない場所で暮らしている人を訪ね、一緒に住んでしまおうという海外住居バラエティの類。極端すぎる街=極タウンに住むのは、東野、パネラーの恵俊彰(ホンジャマカ)、ゲストといったスタジオのモニタリング組では当然なく、番組ディレクターたちだ。
ほぼ、VTRによる番組編成。MCの反応を画面の隅で伝えるワイプは、ない。スタッフの手書きによる絵や日誌が、テロップのように随所に盛り込まれる。タレントではなく、スタッフが優位に番組を進行していることが、よくわかる。緊迫したシーンでスタッフの携帯電話が鳴り、その着信音がRADWIMPSの『前前前世』であったり。スボンのチャックが開いていたり。ミラクルを起こすのも当然、スタッフだ。
訪ねる場所は、かなり厳選されているのだろう。崖のテッペンにある中国の村。ギネスで認定されるほど幽霊が出る英国の怪奇村。マッチョだらけのインドの村。ご長寿だらけのギリシャの街ほか。“土8”にふさわしい撮れ高があるのは、容易に想像できよう。
そんな強い絵のなかでも、しっかり言葉で足跡を残すのが、ベテランの東野。藤田ニコルに、「わかったフリするの、やめたほうがいいよ」と、サラリと言えてしまう。どんな強い発言も、驚嘆の連続であるVTRを凌駕することは絶対にない。いや、意図的に超えない。そのサジ加減が、東野は実に絶妙なのだ。
東野が司会者としていまだ引く手あまたなのは、「超えない」ところにある。(伊藤雅奈子)