『POWER HALL 2018〜イヤー・エンド・スペシャル〜』
▽12月28日 東京・後楽園ホール 観衆 1,580人
今年の夏までに現役生活にピリオドを打つと表明していた“革命戦士”長州力が昨年の12月28日、後楽園ホールでプロデュース興行を開催した。
休憩明けに、長州のファイナルマッチが6月26日の後楽園大会で開催されることが発表されると、場内に『HOLD OUT』が流れた。大きな武藤コールがわき起こる中、現在膝のリハビリで長期欠場中の武藤敬司がリングイン。
90年代のファンが多く集まる会場で、武藤はマイクを握ると「きょうは引退の決まっている長州力。2月15日に行われる俺のプロデュースするプロレスリングマスターズに、最後のオファーをしにやってきました。出場することが決まりました」とプロレスリングマスターズ2.15後楽園大会に長州が最後の参戦をすることが決定したと報告。
続けて「自分自身、今年の3月に両膝を手術しまして、今、復帰に向けて一生懸命頑張ってます。4月に、ニューヨークにグレート・ムタが降臨することが決まってます」とムタ発祥の地・アメリカでの復活を明言。さらに「武藤敬司の復帰戦は、6月に行われる長州力の引退試合に決まりました。武藤敬司新たなる戦い、そして長州力最後の勇姿、みなさん応援に来てください」と、長州のファイナル興行で武藤として復帰すると発表した。
武藤はそのままテレビの実況席へ。長州は「お世話になったところにはできるだけ出たい」と話していた。参戦経験があり、後輩の武藤がプロデュースしているマスターズへの参戦は、「お返し」の一つと言ってもいいだろう。
メインは、長州が藤波辰爾、マサ北宮とトリオを結成し、GHCヘビー級王者の清宮海斗、NOSAWA論外、そして葛西純の異色トリオと対決。この日が誕生日だった藤波に続いて、長州が最後に入場すると会場のボルテージは最高潮に達した。
長州はコンディションが良く、惜しみなくリキラリアットを放っていく。これに対して猛アピールしたのが清宮。プロレスリング・ノアのトップとして、長州に爪痕を残そうと、必死に噛みついて行く姿に90年代のファンからは歓声が送られていた。最後は北宮が清宮を場外で捕まえて、藤波が葛西にドラゴンスリーパーを決めると、長州が論外にリキラリアットを放ちカウント3。長州が2018年のラストファイトを勝利で締めた。
試合後、多数の報道陣に囲まれた長州は笑顔で「6月26日がラスト。あとは藤波さんに頑張ってもらって。できるだけ長くやって、最後に藤波さんが見届けて終わりっていうね。自分で決めたことですから」と永遠のライバル藤波にエール。
北宮には「名前何だっけ?」と確認しながらも「見てて元気いいし、こういう選手が一生懸命練習して、リングに上がってるってのはいいですよね」と孫弟子(北宮は長州の弟子だった佐々木健介氏の弟子)を高評価。「自分で歩けるうちにリングを降りたい」と新世代に託す考えを示した。
長州は1998年の1.4東京ドーム大会で一度引退(2000年に大仁田厚戦で復帰)していることから、“引退”という言葉は使わないというこだわりがあるが、「最後の相手」を聞かれると「それはやっぱり藤波辰爾でしょう。やっぱりもう彼以外は僕はあんまり……。もう、彼がいなかったら今ね、もっと早くやめてるから」と藤波を改めて指名した。これを聞いた藤波は長州と握手を交わすと、ノーコメントで控室へ。藤波にとって長州の存在は大きいだけに、複雑な心境なのは間違いない。37年前に2人の因縁が勃発した後楽園で、シングルマッチが実現しそうだ。
長州と初対戦した清宮は「これが最後ではない。またやりたい」と再戦を望んだ。今後も長州との対戦を希望する選手が続出するのは確実な情勢だが、長州自身は「1試合、1試合を大切にしたい」との考えを持つ。試合数は限られてくると思われる。
「全部できますから」
会見の最後に長州は、このように言い切った。ファンに長州力のプロレスを堪能させる自信があるうちにやめたいというのは、長州らしい考え。それは98年の引退時もそうだった。長州には最後まで鬼の形相を見せてもらいたい。
取材・文・写真 / どら増田