「キャンプインに向け、外野手用の新しいグラフだけではなく、ファーストミットと三塁手用のグラブも発注していました」(関係者)
松井が移籍を決意した背景に、DH専任ではなく、外野手として再挑戦する環境を求めていたのは繰り返すまでもないだろう。エンゼルスのマイク・ソーシア監督も「マツイ本人がOKなら」と前向きな発言をしており、2年ぶりに『左翼手・松井』が見られると思ったが、そうではなかった。状況次第では、内野手転向の可能性もあり得る。
「松井が一塁の守備に入ることも十分にあり得ます」(同)
外野守備は巨人入団後に覚えたもので、高校時代は『三塁手』だった。コアな高校野球ファンなら分かると思うが、高校入学当初は捕手で、その後は一塁手に転向。将来のプロ入りを見据え、二年生途中から三塁にコンバートされた経緯もある。
「ヤンキース時代の08年オフ、ニューヨークの地元メディアが『マツイを一塁に転向させたら?』と提言しているんです。ファンは強肩ではない松井の一塁転向に大賛成でしたが、ヤンキースの首脳陣が二の足を踏んだんです。99年のオールスター戦(日本)でも実際に一塁を守ったし、ファーストの守備は巧いですよ」(前出・同)
一塁転向には賛成の声も多いが、三塁手用グラブを発注した理由が分からない。
「サードには強い打球が飛んできます。瞬発力がなければ務まらないポジションであり、ヒザのリハビリの一環でサードの練習もするつもりらしい」
このオフに松井と連絡を取り合った日本のプロ野球選手の1人がそう言う。しかし、その程度であれば、わざわざグラブまで注文しなくても良さそうなものだが…。
「本人はチャンスがあればサードを守りたいと思っているようです」(前出・関係者)
松井はオフの間、「ウインターリーグに出たい」と話しており、その際には「サードを守るつもりでいた」という。
「FA交渉中、DH専任の選手と思われたのが悔しかったようです。ウインターリーグでサードを守ろうとしたのは彼なりの反論であり、『守備ができる』という自己アピールの場を欲しかったのでは。ソーシア監督がサードで起用するかって? 一塁手はあっても、サードはないと思う」(同)
余談になるが、松井の外野用グラブは一般のそれと比べて、固めに出来ているという。高校時代に三塁を守った名残で内野用グラブに近いものを好んでおり、「1年で2、3個のグラブをダメにするほど柔らかいグラブ」を使うイチローとは正反対の形態になっている。
そう言えば、イチローは「ピッチャーをやりたい」とこぼしていたはず。メジャーでは大量点差の試合になった場合、自軍投手を温存させるため、野手に急造投手を務めさせることもある。しかし、マリナーズ首脳陣はイチローをマウンドに挙がらせるつもりは全くないという。慣れないピッチングをさせ、肝心の打撃に影響が出るのを恐れての配慮だが、今の松井にはサードの練習はハードすぎるのではないだろうか。守備復帰のための自己アピールが過ぎれば、ヒザ痛を再発させることにもなりかねない。完治目前の時期だからこそ、慎重になるべきだと思うが…。(スポーツライター・飯山満)