「西武の2018、19年の連覇は打線の力によるもの。投手陣はイマイチでしたが、大量得点を取って、ピッチャーが失点した分を取り返すスタイルでした」(プロ野球解説者)
その強力打線を牽引してきた山川穂高が右足首の故障で登録を抹消されたのは、10月末。この時点で「西武は終わった」の声も出ていたが、翌日から快進撃を続けている。80年代の黄金期を彷彿させる“堅実野球”だ。辻発彦監督は当時の主力メンバーでもある。「1点をもぎ取り、それを積み上げていくスタイル」はお手の物、体に染みついているのだろう。
「今季、打撃不振で8番など下位を打っていた外崎修汰を3番に入れました。『送りバント』や『エンドラン』を想定しての打順変更です」(前出・同)
試合終盤は救援陣を投入して、逃げ切りを図る。「クローザーの増田達至につなぐ」の意識づけが強まり、「増田が投げれば負けない」という雰囲気にもなってきた。
ようやく上昇気運を掴んだわけだが、これと前後して飛び込んできたのが、「来季の契約」。西武も何人かの戦力外通告の選手名を発表しているが、ファンが最も注目していた選手の名前は入っていなかった。松坂大輔投手である。
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今季、松坂は一軍登板ナシ。同級生の阪神・藤川球児が「万全の準備ができなければ、プロ失格」と潔さを見せてユニフォームを脱ぐと決めただけに、現役にしがみつく姿は対照的であり、「本当に投げられるのか?」とファンも心配している。
「一時期の西武では考えられない温情措置です。渡辺久信GMが『トコトンまでやらせてやる』とし、最後まで守り切るつもりでいます」(球界関係者)
西武はFAで退団する選手数が12球団でもっとも多い。「年俸の上がり幅がどうの」という事情もあるらしいが、野球レベルの高い選手が多いチームなので、他球団の標的にされてきたのだろう。
そんなチーム状況に対し、渡辺GMは「離れてしまった選手を呼び戻せる環境に改める」とし、監督時代からフロントに働きかけてきたという。ソフトバンク指揮官の工藤公康監督がプロ生活をスタートさせた西武球団で現役を終え、米球界に挑戦した松井稼頭央も帰還させ、今では二軍監督も任せている。松坂への温情措置もその一環だが、工藤、松井と松坂では大きな違いが一つある。「チームに貢献して終わる」という姿勢だ。
チームはCS進出の可能性を日々強めているが、松坂はそれを見て、どう思っているのか…。(スポーツライター・飯山満)