総務省がポイント還元を禁止したのは、ふるさと納税の本来の目的を逸脱して利用者獲得競争が過熱したからだ。9月末は人気返礼品の品切れや終了間際はサイトにアクセスしづらい事態も予想される。また、ふるさと納税の限度額は1月から12月までの所得で決まるため、限度額オーバーの寄付にならないよう注意したい。
最近の返礼品で人気なのは米だ。新潟県南魚沼市ではコシヒカリの在庫量を超える申し込みを受注し、同価格帯の別の米で代替するなどしたという。一方で、ふるさと納税は税収が増える自治体ばかり話題になりがちだが、税収が減る自治体もある。例えば、東京都の減収額は、2021年度は1125億円だったが、2025年度は2161億円となり、初めて2000億円を超えた。5年で約2倍だ。もともと、ふるさと納税の目的は“税の再分配”なので、当然と言えば当然か。
しかし、税収減の影響が大きすぎると判断した東京都の自治体では返礼品を用意し始めたところもある。港区は水族館「アクアパーク品川」の閉館後貸し切りなど、区内にある商業施設などを活用した「体験型」を返礼品にする。150以上の施設を予定しており、10月上旬に一覧を公開する。
港区の清家愛区長は「港区ならではの“ときめく体験”がたくさんあるということを、広く発信したい」としている。「体験型」の返礼品で成功したのが横浜市だ。寄付額6万円で、横浜シーサイドラインの運転体験や、寄付額4万4000円で、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルのアフタヌーンティーペア利用券などを用意している。横浜市の2024年度の寄付受け入れ額は、過去最大の28億8000万円で、前の年の約2.4倍に増えた。
横浜市の担当者は「返礼品に力を入れた効果がじわじわ出てきています。『横浜ってこういう場所もあるんだ』と、魅力を知ってもらうきっかけにもなればいいんです」と話す。
東京や横浜は農産物や海産物がなくても、周辺住民(埼玉県や千葉県など)が多いので、その人たちをメインターゲットに、体験型の返礼品で呼び寄せようという作戦だろう。ふるさと納税という制度は、寄付争奪戦における自治体担当者のアイデア合戦という側面もある。公務員は決められたことをやっていればよいという時代ではないのだ。