ブラウン監督は「Aクラス入りしなければ、来季続投はない」と、Aクラス入りが絶望的になった8月初めに球団側から最後通告をされた。「そういうことを言ってもし発奮させようというのなら、おかしい」とブラウン監督は感情的に反発したが、事実上の監督解任決定といってもいいだろう。
「新球場になってファンはたくさん来てくれているのに、今の成績は大いに不満だ」と、松田元オーナーも明言しているだけに、来季は新監督で新本拠地のマツダスタジアム2年目を迎え、13年ぶりのAクラス入りを目指すことになる。そして新監督の大本命に浮上しているのが広島OBの野村氏だ。
野村氏は昨年秋、WBC日本代表監督を決定する『WBC体制検討会議』の一員に若手OBの代表として選出され、注目された。王貞治コミッショナー特別顧問、楽天・野村克也監督、ヤクルト・高田繁監督、北京五輪前日本代表監督・星野仙一氏といったそうそうたるメンバーの中の一人だから、野村氏の抜てき人事が話題になったのは当然だろう
「そもそも新球場・マツダスタジアム完成に合わせて本格政権を期待する野村新政権誕生というのが、広島球団のシナリオだった。ところが、野村がチームの戦力不足に尻込みしたのと、昨年、ブラウンが『3位でクライマックスシリーズ出場』にあと一歩という大健闘を見せたので、もう1年続投という結果になった」と話すのは広島OB。
ルイス頼みだった昨年と違い、大竹寛が一本立ちし、前田健太、齋藤悠葵、篠田純平ら若手投手陣が成長。攻撃陣も4番・栗原健太を中心にして東出輝裕、赤松真人、天谷宗一郎らメンバーが揃ってきている。抑えの永川勝浩の不安定なピッチングなど問題点もあるが、悲願のAクラス入りが可能な戦力は整ってきている。
今オフに晴れて待望の野村謙二郎新監督誕生となれば、広島ファンは万々歳だろう。しかし、ブラウン監督が今後一発大逆転で、もしもクライマックスシリーズ出場権を獲得できれば、事態は少し変わってくる。来季の野村政権も微妙になってくるが…。
ともあれ、“予定通り”? 広島がBクラス決定となっても、野村氏本人が現存の陣営などを考え、昨年のように二の足を踏むことになった場合は、山崎立翔2軍監督の昇格も検討されるだろうし、アテネ五輪、北京五輪で日本代表の投手コーチを務めた大野豊氏も候補として名を連ねることになるだろう。さらには、大物OBの山本浩二氏の3度目の緊急登板もあり得る。松田オーナーとは太いパイプがあり、「非常時だから、山本浩二に頼もう」と、松田オーナーが一言口にすれば、スクランブル内閣は誕生するからだ。
待望の野村政権が誕生しなかった場合、次期監督の人選が混沌とするだけでなく、松田オーナーと野村氏の関係も危ぶまれる。山本浩二氏と並ぶスーパースターの衣笠祥雄氏が、一度も広島の監督をしていないのは、松田オーナーが望んだ「現役を辞めてからも広島在住」を断り、東京を活動の拠点に移したからだといわれている。
「松田オーナーの個人商店のようなもの」といわれる広島球団。ともあれ、来季の広島監督は野村大本命に代わりはないが、まだひと波乱も予測される。
◎野村謙二郎…OBで実績もありファン待望の人物
○大野豊…WBC投手コーチで選手の信頼厚い
▲山崎立翔…2軍監督だが最も地味な存在で「?」
☆山本浩二…オーナーの信頼は厚いが、大穴まで