「やっぱりね…」
チーム関係者にぶつけてみたら、開口一番そんな言葉が返ってきた。
10月5日の中日戦だった(甲子園球場)。2回裏の第一打席で大和に代打が告げられた。「スタメン遊撃手」で試合に出たが、一打席も立たせてもらえなかったのだ。広報を通じだが、「守備で右足をひねったみたい」と伝えられた。大事を取って途中交代と思ったが、交代後も大和はベンチに腰掛け、ムッとした表情でグラウンドを見入っていた。
「真偽はともかく、大した怪我ではなさそう。金本監督が大和を引っ込めて代わりに使ったのは、高卒3年目の植田。期待の若手だが、大和のメンツが…」(前出・関係者)
大和は12年目のベテラン。今季は二塁で48試合、遊撃で56試合に出場した、「守備のスペシャリスト」だ。2014年には外野手でゴールデングラブ賞を受賞している。打撃面でも、今季は両打ちに挑戦し、規定打席には届かなかったが、2割8分の成績を残している。
「いつまで経ってもレギュラー扱いしてもらえないことへの憤りが、冷酷な途中交代で爆発したんでしょう」(在阪記者)
すでに、オリックス、DeNAが獲得に名乗りを挙げている。
阪神も慰留に必死だが、金本知憲監督(49)のコメントは、ちょっと意味シンだ。
「残ってほしいね。(編成に)頑張ってもらうしかない」
たしかに、チーム補強はフロント編成部の仕事だ。しかし、金本監督は昨年オフ、FA宣言した糸井嘉男(36)の獲得交渉に自ら乗り出した。こちらがデキレースだったとしても、だ。本当に残ってほしいと思うのなら、編成スタッフに丸投げせず、自ら話をするべきだろう。これでは、大和がFA退団してしまった場合、全てフロント幹部の責任になってしまう。
12月1日付けで、阪神はフロント幹部を一新する。四藤慶一郎球団社長、高野栄一球団本部長が退任し、阪急阪神ビルマネジメントの代表取締役兼副社長執行役員だった揚塩健治氏が新球団社長に、谷本修球団常務が本部長に就任した。
「阪神グループとしても優勝を急いでいるということ。そのための背広組人事の刷新ですが、これでチームが優勝できないとなれば、現場にも原因究明のメスが入ります」(前出・在阪記者)
気になるのは、掛布雅之前二軍監督(62)の今後だ。オーナー付シニアエグゼクティブアドバイザー(SEA)なる肩書となったが、要はキャンプなどを視察し、坂井信也オーナーにチーム作りの助言をしていくというもの。掛布氏がフロント側に付いたことで、現場との力関係も大きく変わりそうだ。
「阪神は定期的にフロント幹部と一軍監督が食事会をし、意見交換をしています。その席上で糸井獲得が決まり、金本監督がドラフトで、投手ではなく野手を取りたいとする意向が伝えられてきました。野球の専門的な話になれば、フロントは形無しです。今後、掛布氏が知恵袋となるので、フロントも強く反論してくるでしょう」(前出・同)
新フロントの初仕事は、金本監督が欲する4番タイプの助っ人獲りだ。大和の去就はもちろんだが、現場とフロントが衝突する火ダネは一つや二つではないようだ。