なんとネパール滞在のラスト2日間、ヴィトーから
「ジャパニーズ・スタイルのレスリングをトレーニングさせてくれ」
という申し出があったのである。前回の来日時にも、ジャパニーズ・スタイルの練習への参加を熱望していたヴィトーだったが、諸事情により実現しなかった。なので彼は、今回のチャンスに燃えに燃えていたのである。もちろんジャパニーズ・スタイル・レスリングのインストラクターは、他ならぬカンパイ・ボーイズだ。
ビッグ・ヴィトーとのお手合わせが実現する以前から、夢路たちはネパールのレスラーたちとトレーニングを重ねていた。
彼らは皆、ヒマラヤン・タイガーの弟子。夢路はヒマラヤン・タイガーから、
「ウチの若い奴らにジャパニーズ・スタイル・レスリングを教えてくれ」
と、たっての願いを受けていたのだ。
にも関わらず、トレーニングの初日、「お前は何様だ!?」と不遜な態度で夢路に食ってかかった大男がいた。
夢路はわずか一秒で、大男の手首の関節を極め、絞りあげた。
大男は一瞬で夢路に畏服し、その後「イェッサー!」と夢路のボディガードを志願するほどになった。
ネパールのレスラーたちと、町の人々との交流。
そしてヒマラヤン・タイガーの、巨大すぎる存在感。
その中で夢路は、ヒマラヤの麓・ネパールで“地下プロレス”が行われた意義を、おぼろげながら感じとっていた。
夢路にとって不思議で仕方なかったことが、ネパールの国旗の形だ。
なぜ四角形じゃないのか。なぜネパールだけが、三角形を二つ組み合わせた、不思議な形の国旗を掲げているのか。
ネパール人のある男が、「当然だ」と言わんばかりの表情で、誇らしげにこう答えた。
「我々の国には世界一のチョモランマがあるんだ。世界一高い山を抱える国が、世界で唯一違う形の国旗を持つことは当たり前じゃないのか?」
そしてネパールの国旗には、太陽と月がデザインされている。
このことを知った瞬間、夢路は一つの確信に至った。
日本の地下戦士であるこの俺が、なぜネパールの地に招かれたのかを。
「ネパールの国旗に太陽と月があるように、プロレスリングにも太陽と月があるんだ」
「太陽のレスリングは、フォー・オーディエンス。観客に魅せるレスリングだ。一方、月のレスリングはフォー・セキュリティ。ユー・マスト・プロテクト・ヒマラヤン・タイガー。OK?」
「君たちはこの国のプロレスリングを守らなければならない。だから月のレスリングを学ぶんだ。OK?」
ネパールの国旗に隠された真実。
これこそが、ヒマラヤン・タイガーが日本の地下戦士を呼び寄せた意図に他ならなかった。
ヒマラヤン・タイガーの若い弟子たちは、ケーブルTVから流れるWWEで育った世代。彼らにとっては、プロレス=WWEなのだ。彼らはいわば、「太陽」のプロレスリングしか知らない。
だが、ネパール国旗に太陽と月が二つ並んでいるように、プロフェッショナル・レスリングにも「太陽」と「月」が存在する。太陽と月を両方学んでこそ、プロフェッショナル・レスラーたり得るのである…。
バック・トゥ・ザ・ベーシック。
このプロフェッショナル・レスリングの大原則を、日本の地下レスラーが知っている。
地下プロレスを動かす秘密組織WUW(World Underground Wrestling)の大幹部である、ヒマラヤン・タイガーのこの信念は、フランスに君臨するボス、イワノフ・ロゴスキーJr.の意思でもあることは間違いない。
思えば、夢路たちが昨年オーストラリアに旅立った際(豪州地下プロレス)、地下組織が彼らに課した命題は「サムライ・アートの伝播」であった。
さらに振り返って、2年前の地下プロレス日本上陸。
地下プロレス世界王者の証・鎧甲を模した木彫りのチャンピオンベルト。
明らかに彼ら=地下組織は、この「日本」を神格的に特別視している…。
ネパールでの使命を終え、日本の地下プロレスラー・富豪2夢路は、疲労の中にも心地よい充足感を、確かに感じとっていた。
あとは日本に帰るだけ…と思いきや、夢路だけが本来の帰国予定日よりも早く、カトマンズ空港に呼び出された。
夢路を呼んだのは、他ならぬヒマラヤン・タイガー。そしてその手には、香港行きのチケット。
「九龍街へ行って、KIM IP(キム・アイピー)に会ってくるんだ」
ヒマラヤン・タイガーの意思は、地下組織の長イワノフ・ロゴスキーJr.の意思。
やはり地下組織は、夢路に一瞬たりとも休息を与えないつもりなのか。
そして「九龍街の毒蛇」KIM IPとは何者なのか…!?
次回より怒濤の香港編。誰か教えてくれよ。
地下プロレス『EXIT』公式サイト
http://www7.plala.or.jp/EXIT/
梶原劇画で伝承された「地下プロレス」が、この日本に存在した! 闇の闘いを伝える『EXIT』とは何か!?
http://npn.co.jp/article/detail/97320773/
世界に拡散する地下プロレス…ネパール、香港で繰り広げられた“世界地下行脚”を追う!(1)
http://npn.co.jp/article/detail/54205265/
世界に拡散する地下プロレス…ネパール、香港で繰り広げられた“世界地下行脚”を追う!(2)
http://npn.co.jp/article/detail/71648266/
世界に拡散する地下プロレス…ネパール、香港で繰り広げられた“世界地下行脚”を追う!(3)
http://npn.co.jp/article/detail/84212018/
世界に拡散する地下プロレス…ネパール、香港で繰り広げられた“世界地下行脚”を追う!(4)
http://npn.co.jp/article/detail/58713392/
4/18(SUN)
地下プロレス『EXIT-37 HIGHEST』@BLACKPALACE bELGAMO
17:30 open/18:00 start
include dinner
advance 5,000 yen/day 5,500 yen
drink cash on
(山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou