ここ数場所、優勝が千秋楽前に決まることが多く、先場所(1月=両国)、先々場所(昨年11月=九州)は13日目に優勝が決まってしまうドッチラケの場所だった。今場所は大関獲りが懸かった鶴竜が14日目まで1敗を堅持し、2敗の白鵬の前を走った。千秋楽では鶴竜が前頭6枚目の豪栄道(25=境川)に苦杯を喫し、大関・把瑠都(27=尾上)戦、決定戦で連勝した白鵬が逆転Vを遂げた。決定戦にもつれたのは、10年九州場所(11月)にて14勝1敗で並んだ白鵬対前頭9枚目・豊ノ島(28=時津風)以来、1年4カ月ぶりで、優勝争いの点では久しぶりに盛り上がった場所となった。
興行的にも一連の不祥事で不入りが続いていたが、今場所は15日中9日に満員御礼が出て、最近では09年春場所の8日を超えるなど、相撲人気復活の兆しを見せた。これは、春場所担当部長・貴乃花親方の奮闘に加え、土俵の充実が客入りにつながったもよう。
しかし、根本的な部分では何も問題点は解消しなかった。場所を盛り上げたのは白鵬と“関脇”の鶴竜。先場所、初優勝を飾って綱獲りが懸かった把瑠都は12日目に3敗目を喫し、優勝争いから早々に脱落し、綱獲りも消滅。気落ちした把瑠都は、最終的に10勝5敗という平凡な成績で大きく期待を裏切った。
他の大関陣も誰一人優勝争いに絡めず、日馬富士(27=伊勢ヶ浜)の11勝4敗が最高。大関5人中、琴欧洲8勝7敗(29=佐渡ヶ嶽)、稀勢の里9勝6敗(25=鳴戸)、琴奨菊9勝6敗(28=佐渡ヶ嶽)の3人は1ケタに終わるふがいなさだった。
新横綱の誕生は待望されるところではあるが、1人横綱の現状では、白鵬と大関による優勝争いが千秋楽まで持ち越されることが理想であり、それが最も盛り上がる形。だが、残念ながら大関陣が情けない現状では、それが望めない。大きな期待を背負って昇進した日本人の琴奨菊も稀勢の里も、昇進場所こそ11勝(4敗)を挙げノルマを達成したものの、2場所目以降は1ケタにとどまった。
3場所で33勝をマークした鶴竜の大関昇進には誰も異論はなく、28日に正式に決まる。これで、実に6大関時代に突入する。人数だけ多くても、みんなで星の潰し合いをしているようでは、白鵬の独走を許すだけ。先場所の把瑠都のように、大関陣の踏ん張りがなければ、大相撲は盛り上がらない。
(落合一郎)