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本好きオヤジの幸せ本棚(50)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『希臘から来たソフィア』(さかき漣=作/三橋貴明=原案 自由社1680円)

 文章にはいくつものジャンルがある。新聞記事、雑誌記事といったジャーナリスティックなものは最も私たちの日常に欠かせない文章であるが、時には学術的な本を読み、自分の来し方行く末について考えてみたくもなる。あるいは、詩、俳句、短歌を味わい、季節の移ろいや人の気持ちの機微を心の中でかみしめたくもなるだろう。おそらく小説は、そうした複数の文章ジャンルをすべてのみ込んでしまう力強さを持っている。
 『希臘から来たソフィア』は経済評論家・三橋貴明が原案を担った小説である。本誌での連載コーナー『マスコミに騙されるな!』を読んでわかる通り、ジャーナリスティックな文章を主軸にしている人だが、作者は彼の原案を基にして雄大なエンターテインメント小説を書き上げている。
 主人公・橘航太郎は衆議院議員選で大敗してしまった男。失意の最中、留学のために東京に来た女性・ソフィアと出会う。ギリシャ人の父と日本人の母との間に生まれたハーフだ。航太郎は彼女とのディスカッションで、本来の政治家の役割について熟考せざるを得なくなり、次は必ず当選するという意志を固めていく…。
 現在の国際経済がはらんでいる問題をテーマにしつつ、立身出世物語、そしてラブストーリーの要素も持っている、まさに小説を読む醍醐味を感じさせてくれる作品だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『「余命3カ月」のウソ』(近藤誠/KKベストセラーズ・720円)

 「進行性胃がんで、余命3カ月です。今すぐ手術を」医者にこう言われたら、あなたならどうしますか?
 「医者に殺されない47の心得」で話題沸騰の近藤誠医師が、余命宣告のカラクリと、がん治療の真実にメスを入れた待望の新刊!

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 4月2日に新生・歌舞伎座がオープンし、1年にわたるこけら落とし公演が現在行われている。中村勘三郎、市川團十郎と、相次ぐ重鎮の訃報に接した直後とあって、歌舞伎座のリニューアルはテレビ等でも注目の的だ。『演劇界』(演劇出版社/1400円)は、日本で唯一の歌舞伎専門月刊誌。大判サイズで見るクオリティーの高いカラー写真は、迫力と臨場感が満点だ。
 役者へのインタビューも豊富で、最新号では中村吉右衛門と市川猿之助が登場。特集テーマでもある『四国こんぴら歌舞伎』に出演する2人が、熱をこめて意気込みを語っている。
 歌舞伎ファンは高齢化が進み、若いファンの取り込みが緊急の課題となっているそうだ。ネットやゲーム世代の若年層を振り向かせるのは、決して容易なことではないだろう。一方、雑誌も若者離れが著しいメディア。日本が誇る伝統芸能へのエールを込め、オヤジたちはぜひ一読すべし!
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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