1991年に発売されたファミコンソフトは全152。前年の11月21日には後継機のスーパーファミコンが登場したものの、まだ大半のメーカーがファミコンソフトの開発も並行して続けていた。あのFFだってファミコン版のIVがリリースされる予定だったのである。80%は完成していたという話や、データが飛んで発売できなくなった等、幻のFFにまつわる噂話は数多いが、真相は闇の中だ。ともかくである。勢いは失速していたとはいえ、1991年はファミコンがまだまだ現役だったのである。
仮にこの頃をファミコン後期と呼ぶことにして、『メタルスレイダーグローリー』は紛れもなくファミコン後期を代表するゲームの一つである。写真を見てほしい。明らかにそれまでのファミコンとは違うことがお分かりいただけるだろう。これでもかというほど細部に至るまで緻密に描かれたグラフィック、独特の柔らかい色使い…。また、登場人物が突然アニメーションすることもあって、これが実に滑らかなのだ。
これらは全て「MMC5(メモリーマネージメントコントローラファイブ)」という特殊チップによって実現できたもの。特殊チップは他にも幾つか存在し、コナミのように独自のチップを開発・搭載することもあった(コナミのそれはVRCと呼ばれる)。技術的なことを書くときりがないので割愛させていただくが、要はこの特殊チップを搭載することで、サウンドおよびグラフィックの向上など様々な恩恵が受けられるのである。ちなみにMMC5を採用したのは光栄の一部ゲームやジャストブリードなど。これを搭載したゲームのカートリッジが一様に長いのは、MMC5自体が縦長だからという単純な理由である。カートリッジの大きさにもちゃんと意味があるのだ。
なお、有名な話だが、本作は出荷本数が少なかったこと、ハードの過渡期に発売されたことなどが手伝って一時はプレミアソフトの代表格であった。かつて秋葉原のボッタクリ店でウン万円の買い取り価格を見た時は真剣に手放そうか悩んだものである。が、現在ではバーチャルコンソールで配信されたこともあり価格は落ち着いた。
<次にやるべきことがパスワードになっている>
それでは肝心のゲーム内容を見ていこう。本作はオーソドックスなSFアドベンチャー。ただし物語中盤ではコマンドRPGライクな箇所があったり、終盤ではシューティング(のようなもの)も。プレーヤーが主人公の日向忠(ひむかいただし)になったような錯覚に陥る…ようなことはさすがにないが、コマンド総当り形式ADVの宿命ともいえる“中弛み”から、一時的にせよ開放されるのはありがたい。まあ、若干面倒ではあるのだが。
ところで前回のディーヴァもそうだったが、本作は随所に“80年代臭”が漂っている(87年に開発が始まっていたので当然か)。キャラの顔立ちやメカの設定がそれを真っ先に連想させるのだが、筆者のようなおっさんにとってはそれがたまらなく心地良い。特に女性キャラを見ていると甘酸っぱい不思議な感覚が湧き上がってきて、矢も盾もたまらず、本棚からおもむろにきまぐれオレンジロード辺りを取り出して、つい読みふけってしまうのである。80年代美少女キャラに共通する、“萌え”とは違う何か別の感覚…。
なお、ストーリーはひと昔前のSF・ロボットアニメにありそうな内容。絶賛するほどではないが、そこそこ良くできている。ちなみに主人公はシスコンで、フリフリドレス着用の妹のあずさも強度のブラコンという危険な設定。そのあずさが思いっきりジャンプするシーンではパンチラを拝むことができるほか、ヒロインのバスタオル姿も(本当はさらに過激なシーンがあったらしいが発売直前にカットされた模様)。そのためなのか、Wiiのバーチャルコンソール版ではCEROレーティングB(12歳以上対象)となっており時代の流れを感じさせる。東京ではいずれ配信禁止になったりして…。
後にディレクターズカット版(SFC)が発売されたり、2008年には豪華声優陣を起用したドラマCDもリリースされるなど根強い人気を誇る本作。追加シーンのあるSFC版も捨てがたいが、マニアとしては「これが本当にファミコンなのか…?」と、いちいち大げさに驚きながらプレイするのが一番楽しかったりする。(内田@ゲイム脳)
(C)HAL LABORATORY INC.1991 (C)★YOSHIMIRU 1991 (C)LIVE PLANNING 1991
DATA
発売日…1991年8月30日
メーカー…HAL研究所
ジャンル…ADV
ハード…ファミコン