発端は5月11日、自民党大阪府連の新会長、渡嘉敷奈緒美衆院議員が府連総会でこう語ったこと。
「対立からは何も生まれない。(選挙の)負けは神様がくれた贈り物。『大阪都構想』について、住民投票は賛成させて頂きたい」
大阪都構想はもちろん、住民投票にも反対してきた自民党大阪市会議員らは猛反発。北野妙子幹事長は、「都構想反対は1ミリたりともぶれることはない。選挙後の変節は有権者への冒とくであり、訴えたことは守っていきたい」と大激怒した。
「自民党は府議会、市議会でも維新に大惨敗。その上、安倍首相が応援に入った国政補選でもボロ負け。もともと、首相や菅官房長官は維新の影の指南役、橋下徹元大阪市長、維新代表の松井一郎大阪市長とはツーカーの仲。大阪万博や大阪サミットも裏では手を携えて推進した。いつまでも維新と大阪自民の関係がこじれたままでは都合がよくない。渡嘉敷発言は官邸の意向を受けての宣言と見ていいでしょう」(自民党関係者)
もう一つ、菅官房長官が気にしたのは公明党の立ち場だった。
「橋下元大阪市長らは“公明党がこれ以上、都構想、住民投票に反対なら次期衆院選で公明党の牙城、大阪、兵庫の6選挙区に対立候補を出す”と恫喝している。維新が有言実行すれば、現状では公明党の敗北は必至で、党の存続さえ危うくなる。となれば、自公連立政権崩壊も現実味を帯びてくる。公明党を助けるため、自民党も住民投票賛成に回れば、公明党のメンツも立つ。10日に松井大阪市長らと国会内で会談した二階幹事長、維新とパイプを持つ菅氏が渡嘉敷氏に方針転換を指示したのです」(同)
もっとも、自民党中央から住民投票賛成の意向を突き付けられた地元大阪市議団にとっては面白くない話だ。急に梯子を外された自民党大阪市議らの怒りはそう簡単に収まるものなのか。
「官邸の本音は、維新とは改憲も含めて手を携え続けたい。一方、大阪府の自民党国会議員も公明党、創価学会の支援なくして今後の選挙は戦えない。公明党に助け船を出したくてウズウズしている。今後、大阪市議団内は何度か反対、賛成の激しい討議の末、結局はガス抜きされ住民投票だけ賛成する方向に進むはず。大阪自民党を複数の糸でからめ、複雑にした“菅裁き”がここで試されることになる」(全国紙政治担当記者)
維新完勝。