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トレンド 2011年11月01日 11時45分
『南極大陸』への当てつけにも聞こえる『家政婦のミタ』の台詞
日本テレビ系水曜ドラマ『家政婦のミタ』が、10月26日に第3話「母を殺した父の正体を暴いて」を放送した。ミステリアスな家政婦という組み合わせが話題となり、今クールの視聴率競争のダークホースとなった『家政婦のミタ』。今回はドラマ競争の大本命『南極大陸』への当てつけになるようなセリフも飛び出した。 家政婦・三田灯(松嶋菜々子)の派遣先の阿須田家の主・恵一(長谷川博己)は情けない夫・父親であった。恵一は勤務先のハウスメーカーの同僚・風間美枝(野波麻帆)と不倫関係にあり、妻の凪子(大家由祐子)に離婚を迫ったことが妻の自殺の原因であった。これだけでも最低であるが、恵一は最初から結婚したくなかったと自白する。 言い訳ばかりで逃げてばかりの恵一に腹を立てた長女の結(忽那汐里)は三田に恵一の勤務先で不倫の事実を暴露させる。子ども達に追及されても恵一は正面から向き合わず、「もう疲れた」と投げ出してしまう。 長男の翔(中川大志)からは「偉そうに他人の家なんか作ってるんじゃないよ」と言われる。このセリフは家族と向き合わなかった仕事人間への痛烈な非難である 。これは恵一だけでなく、戦後日本の主流であった仕事人間全てに向けられる非難である。 同じクールのTBS系日曜劇場『南極大陸』では南極観測という困難なプロジェクトに取り組んだ熱い男達のドラマである。南極観測という国家的プロジェクトに直接関係しない子どもたちまでが夢を見て、登場人物皆が一丸になって取り組み、応援する。主題歌は中島みゆきが担当しており、同じく中島みゆきが主題歌を担当したNHKのドキュメンタリー『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』を彷彿させる。 『南極大陸』も『プロジェクトX』も感動的であるが、その影には家族関係や地域コミュニティなど仕事優先の犠牲にされたものも多かった。現代日本の問題は高度成長期的なモーレツ主義に起因するものも少なくない。その意味では『南極大陸』や『プロジェクトX』で郷愁に浸るだけでは非生産的である。父親失格の恵一に「偉そうに他人の家なんか作ってるんじゃない」と言う翔の台詞は登場人物皆が南極観測優先で盛り上がる『南極大陸』への当てつけにもなる。 TBS開局60周年記念番組を銘打った『南極大陸』は主演の木村拓哉を始めとする豪華キャストに豪華セットと今クールで最も注目度の高いドラマの一つである。これに対して松嶋菜々子の2年ぶりの連ドラ主演となった『家政婦のミタ』は相対的に低予算ながら高視聴率というコストパフォーマンスの高さで、『南極大陸』と対比される。その『家政婦のミタ』で『南極大陸』的な感動に水を差す台詞が登場したことは興味深い。仕事優先の戦後日本的価値観に替わる価値を打ち出せるか注目である。 『家政婦のミタ』の情けない夫に対し、TBS系金曜ドラマ『専業主婦探偵〜私はシャドウ』では「美しすぎる夫」が登場する。これは粕谷紀子の漫画『私はシャドウ』を原作としたドラマである。 専業主婦の浅葱芹菜(深田恭子)は夫の浅葱武文(藤木直人)にベタ惚れで、「ふみクンのために生きたい、ふみクンの影でいたい」と言うほどであった。しかし、武文からは気持ち悪いと突き放される。ひょんなことから私立探偵・陣内春樹(桐谷健太)の探偵見習となった芹菜は、武文の心を取り戻すために奮闘する。10月28日放送の第2話では武文の上司・新山千早・IR部部長(石田ゆり子)の魔の手から武文を守ろうとする。 頭の中は武文のことでいっぱいの芹菜は、「マリー・アントワネットの生まれ変わり」な どの発言で浮世離れしたイメージのある深田恭子の適役である。今回も陣内に「メイクして」と言い放ち、「何様だ」と歯ぎしりさせるなど天然お嬢様ぶりを発揮している。 一方で深田の不思議キャラは『富豪刑事』のようにゴージャスさと結びついていたが、芹菜は夫の影にすらなれない地味な存在である。運動音痴かつ機械音痴で、武文との不倫を目論む千早を目の前にして何も言えない弱気な存在である。そのために芹菜のウザさも嫌味にならず、むしろ応援したくなる。 その芹菜が愛してやまない武文は芹菜に冷たく、この点でも芹菜に感情移入したくなる。武文を演じる藤木直人は前々クールの月9ドラマ『幸せになろうよ』でヒロインをもてあそぶ悪い男として登場したものの、中盤では妻に捨 てられるというカッコ悪い役であった。 『専業主婦探偵』でも千早からのアプローチにまんざらでもなさそうな様子である。しかし、千早への接近も昔の上司で芹菜の父・藤元泰介(小日向文世)と関係する思惑があっての言動と描かれる。ここではカッコいい藤木直人が期待できそうである。 『家政婦のミタ』では感情を露わにする現代の女子高生を演じた忽那汐里であるが、NHK大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』では人形のような千姫を演じている。30日放送の第42話「大坂冬の陣」は徳川秀忠(向井理)が大阪城に乗り込む。まるでドラマ前半で歴史上にイベントに絡んでいた主人公・江(上野樹里)が乗り移ったような活躍である。 『江』の秀忠は豊臣家との両立を望む設定である。徳川家康(北大路欣也)の前では無力という史実に沿いながらも、独自エピソードを織り込みドラマとして筋を通した。 (林田力)
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芸能 2011年10月31日 15時30分
イジリは兄さんへのエール!? 『紳助ネタ』から覗く松本人志の“浪花節”
島田紳助さんが一連の疑惑を残し芸能界を去ってから2か月。騒動が一段落してきたためか、お笑い芸人たちが彼を引き合いに出し、笑いのネタにするのを見かける機会が増えてきた。 例えば10月の23日に放送された『クイズ☆タレント名鑑』(TBS系列)で有名人の「自称・そっくりさん」が多数出演した企画に島田紳助さんにもよく似ている人が出演。正解はウド鈴木に似ている、という事だったが出演者らが「島田紳助」の名を口にしたところに「ピー」音が入る等の編集が加えられ、スタジオが笑いに包まれる一瞬があった。また、27日にはとんねるずの石橋貴明が島田紳助さんの引退会見のパロディを見せたりもしていた。 引退直後こそ、芸能界をはじめとしたメディア全体に彼の話題を出したり 、ネタにする事をタブーとするムードが広まっていたが、月日が経つに連れてその雰囲気も薄れてきたからだろうか? 実は、これらの“紳助ネタ”がメディアに出てくるきっかけを作ったのはダウンタウンの松本人志だと言われている。TBS系列「リンカーン」の恒例企画『芸人大運動会』のチーム選抜の模様が10月11日に放送されたのだが、松本が自身のチームに東京03を引き入れた際に、浜田のキツイ言葉に松本が少しフォロー。それを受けて宮迫もフォローしたのだが、その内容は東京03とかつて確執があったとされている島田紳助さんをネタにしたもの。一部では「問題発言か!?」とも騒がれていたこの宮迫の発言だったが、実はダウンタウンの、特に松本の絶妙なトスが背後にあった。うまく過去のケースを引き合いに出し、東京03で笑いをとりつつ島田紳助さんをもネタに組み込む、笑いの流れが一連のやりとりには組み込まれていたのだ。 これには島田紳助さんを慕う松本人志の計らいが背景にあったとされている。もともと松本人志は島田紳助さんに憧れて芸能界に入り、彼をお笑いの目標として腕を磨いていた。一方で島田紳助さんもダウンタウンの実力を認めており、後に彼らはトーク番組『松本紳助』(日本テレビ系列)にて共演を果たしている。 松本としても、今回の島田紳助さんの引退はその背後関係を別にしても残念に思っていたという。つまり、一連の“紳助イジリ”は彼をネタに使うことで、引退し満足に外にも出られない島田紳助さんをテレビの向こう側から応援するという目的が背後にあったのでは、と見られている。 理由や背後関係はどうあれ、彼の早すぎる引退を惜しむ声は多い。一部では すでに芸能界復帰が予定されているという報道がされはじめた島田紳助さん。今になってようやく沸き出した後輩芸人の島田紳助さんに対する応援メッセージの数々に、今後も注目させられる日が続きそうだ。
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芸能 2011年10月31日 12時25分
心配…板野友美が胃腸炎
アイドルグループ、AKB48の主要メンバーである“ともちん”こと板野友美が30日、脱水症状や嘔吐、腹部の痛みなどを訴え、同日朝に都内の病院に救急搬送されていたことがわかった。病院では胃腸炎と診断された。同日に予定されたいた新曲「風は吹いている」の握手会イベント(幕張メッセ)は急遽、欠席することになった。 前日の深夜には自身のブログで、「寒い中来てくれた方ありがとうございましたっ風邪には注意してね」とファンをきづかう優しい一面を見せていたともちん。一部報道によると、本人は食あたりと説明しているという。 ともちんこと板野友美は、リアルライブを見ている可能性があり、今後も、ぜひ国民的アイドルグループの主力として活躍して欲しいメンバー。 大人気の彼女はこれから年末にかけて、バラエティ番組や歌番組など多忙なスケジュールを迎えることは必須であり、今後の体調も心配だ。まずはしっかり静養して、また、元気で魅力的な姿をファンの前に見せて欲しい。 がんばれ、ともちん!!
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芸能 2011年10月31日 11時45分
恋多き男・ISSAが交際宣言でゴールイン間近か
「東京スポーツ」で交際宣言していたDA PUMPのISSAだが、30日に所属事務所の後輩とともに参加したライブイベントでISSAと同じ沖縄出身の20代後半の女性と結婚を前提に交際していることを明かした。 ISSAはスポーツ紙各紙の取材に対し、「僕も今年33。落ち着いていろんなことを考える。そういう報告ができるように、きちんと生きていきたい」とコメント。右薬指に彼女とのペアリングを光らせていたという。 「イベントではいつから交際しているかなど詳細は明かさなかったが、結婚は近いようだ。昨年の同じイベントでISSAは他のアーティストとのコラボしたラブソングを披露し『(恋愛)経験がいっぱいあったので曲に紡いだ。後輩には「オレみたいになるな」って言ってます』と余裕の自虐ネタで笑わせていただけに、その時点で交際していたのでは」(芸能記者) あまりにもモテまくるため、「東スポ」紙面では往年のモテ男で俳優の火野正平になぞらえ「平成の火野正平」と呼ばれたISSAだが、とにかく美女ばかりと浮き名を流してきた。 「最初に交際が報じられたのはISSAがまだ21歳の時で、お相手は映画で共演した同じ事務所でSPEEDの上原多香子。その後、柴咲コウ、あびる優、伊東美咲、最近ではモデルの藤井リナと浮き名を流し、交際していたわけではなかったようだが、宮沢りえとは深夜のバーでキスする写真が流出していた。ロンドンブーツ1号2号の田村淳と並んで、芸能界のモテ男2トップの一角を担っていて、一時期は『ISSAを見つければページが埋まる』と言われていた」(写真誌記者) 結婚となれば、最後にメディアに提供するネタは恋人との2ショット写真になるか?
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芸能 2011年10月31日 11時45分
「誕生日プレゼントは包丁でした!」スザンヌ、大人っぽさ満載のセカンド写真集をキュートにPR
10月30日、タレントのスザンヌが最新写真集『SECOND SEASON (撮影・宮澤正明)』の発売を記念して、紀伊國屋書店新宿南店にて「サイン本お渡し&握手会イベント」を行った。バラエティ界のキュートな人気者とあって、同書店前には500人近いファンが行列を作った。 イベントに先駆けて行われたプレス向けの記者会見では、2日前、25歳の誕生日を迎えたスザンヌに対してサプライズケーキも用意された。 写真集を出すのはこれが2作目。全編L.Aロケによるその内容は、比較的ナチュラルな仕上がりでありながらも、彼女らしい愛らしさに溢れ、自然体なカットと並んでお約束? ともいえる大人っぽくセクシーな表情も満載だった。 “お父さんには見せました?”というプレスサイドの質問に対してスザンヌは「見せました。セクシーなショットにはさすがにびっくりしたみたいで、見たいけど見られないみたいな感じでした。そういう結構すごい写真があると、わたしの方をちらちらと見て、恥ずかしそうにしてました」と笑った。“噂の彼には?”と、続けて質問がとぶと、「どうなんですかね、見てくれたかどうかよくわかんないです。渡してもないんです」と恥ずかしそうに語った。 プライベートでは「海の近くの喫茶店を作るのが夢」と話したスザンヌ。25歳の誕生日にはサプライズで両親が熊本からかけつけた。「誕生プレゼントが名前入の包丁だったんです。まだ使ってないですが、結構本格的な包丁で、出すとドンという感じ。特別な晩ご飯を作るときとかに使いたいです」と家庭的なエピソードも披露。 噂の彼と過ごした誕生日についてもプレスから質問がとんだが、「誕生日プレゼント? アクセサリー関係かな。でも指輪とかではないです」とさらり。自身の結婚についても「30歳くらいでしたいかな。まだまだ先でしょ」と、当面は仕事一筋を強調していた。 (取材・文 名鹿祥史)
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スポーツ 2011年10月31日 11時45分
“ボクシング界のニュースター”井岡一翔に強力なライバル出現! 大みそかの紅白の裏はボクシング決戦へ
今年の大みそかのNHK「紅白歌合戦」の裏は、ボクシング決戦となりそうだ。 10月30日、テレビ東京で会見が開かれ、大みそかにボクシングのダブル世界タイトルマッチが開催されることを発表した。会場は神奈川・横浜文化体育館になる予定だ。 世界戦に臨むのはWBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志(31=ワタナベ)と、WBA世界フェザー級10位の細野悟(27=大橋)。王座奪取後、3戦連続KO防衛中の内山は、同級暫定王者ホルヘ・ソリス(32=メキシコ)と王座統一戦。細野はWBA世界フェザー級王者のセレスティノ・カバジェロ(35=パナマ)に挑戦する。このダブル世界戦は同日に同局にてゴールデンタイムで生中継されることが決まった。 大みそかのボクシングといえば、正式な発表はまだなされてはいないが、“ボクシング界のニュースター”であるWBC世界ミニマム級王者・井岡一翔(22=井岡)が、大阪府立体育会館で2度目の防衛戦を行い、その試合をTBSがゴールデンタイムで放送することが内定している。テレビ東京はTBSと井岡に、真っ向勝負を挑む腹づもりだ。 ダブル世界戦を主催する大橋ボクシングジム・大橋秀行会長は「他局でも大みそか開催のウワサがあり、いよいよボクシングの時代が来た。なんで大みそかにボクシングをやらないのかとずっと思っていた。ボクシングで大みそかを変えたい」と意気込んだ。 数年前まで大みそかの紅白の裏は格闘技が定番だった。「Dynamite!!」(TBS)と「PRIDE」(崩壊=フジテレビ)が、視聴率争いでシノギを削った。日本テレビがアントニオ猪木プロデュースの「INOKI ボンバイエ」を放送し、実に3局が紅白の裏に格闘技を投入した年もあった。それももはや過去の話。今年は最も長く続いた「Dynamite!!」も消える見込み。 今後、ボクシング中継が大みそかの定番となっていくのか。それは、TBS、テレビ東京両局での数字いかんということになるだろう。(落合一郎)
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芸能 2011年10月31日 11時45分
AKB48 新曲は『上からマリコ』
アイドルグループ、AKB48の24枚目のシングル曲のタイトルが『上からマリコ』であることがわかった。同曲は9月20日に行われた第2回じゃんけん大会で選ばれたメンバーが選抜された曲であり、センターポジションは篠田麻里子がつとめる。AKB48の歴史の中でも、メンバー個人の名前が曲のタイトルに使われるのははじめて。<選抜メンバー>篠田麻里子(20)藤江れいな(2)峯岸みなみ(21)小林茉里奈(初)秋元才加(13)大家志津香(初)前田亜美(1)佐藤すみれ(2)肥川彩愛(初)梅田彩佳(2)河西智美(21)桑原みずき(初)小嶋陽菜(24)山口夕輝(初)山内鈴蘭(初)北原里英(12)※()の中は選抜回数
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芸能 2011年10月31日 11時45分
蒼井優が出演料をいわき市に寄付
女優の蒼井優が、自身がナレーターをつとめたドキュメンタリー映画ドキュメンタリー映画「がんばっぺ フラガール! フクシマに生きる。彼女たちのいま」の出演料を全額、福島県・いわき市に寄付することがわかった。 同ドキュメンタリー映画はいわき市にあるスパリゾートハワイアンズに所属するフラガールたちの東日本大震災後の姿を追った作品。2006年に『フラガール』に出演した蒼井は今回のドキュメンタリー映画のナレーションについて、「被災地の応援になるなら」と快諾していた。
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レジャー 2011年10月31日 10時30分
天皇賞・秋 トーセンジョーダン圧巻レコード勝ち!
競馬の「天皇賞・秋」(GI・芝2000メートル、30日東京・18頭)は、中団後方を進んだ単勝7番人気のトーセンジョーダン(N・ピンナ騎手)が最後の直線で鋭い差し脚を発揮、ダークシャドウ(F・ベリー騎手)との叩き合いを1/2馬身差制し優勝。悲願のGIタイトルを獲得した。1分56秒1はレコード。 3着ペルーサ(横山 典弘騎手)。連覇を目指した単勝1番人気のブエナビスタ(岩田 康誠騎手)は4着に終わった。 トーセンジョーダンは父ジャングルポケット、母エヴリウィスパーの牡5歳馬。主な勝ち鞍=重賞4勝目。ピンナ騎手は初勝利。池江 泰寿調教師は先週の菊花賞(オルフェーヴルが史上7頭目の3冠達成)に続き、2週連続GI制覇。天皇賞・秋は初勝利。「配当」単勝(12)3,330円複勝(12)850円(7)260円(8)350円ワイド(7)(12)2,520円(8)(12)3,950円(7)(8)1,090円枠連(4)(6)910円馬連(7)(12)7,020円馬単(12)(7)2万3,560円3連複(7)(8)(12)2万2,790円3連単(12)(7)(8)21万4,010円*レース結果については、必ずJRA公式発表でご確認ください。
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スポーツ 2011年10月30日 11時45分
ドラフト舞台裏でベイスターズ売却延期が! 加地隆雄球団社長が奔走
今年のプロ野球・ドラフト会議で会場がもっとも沸いたのは、北海道日本ハムファイターズの菅野智之投手(東海大)の入札がアナウンスされた瞬間である。だが、舞台裏では“切実な話”で持ちきりだった。横浜ベイスターズの買収問題についてだ。翌28日に予定されていた『球団譲渡』を承認する臨時取締役会の延期が、親会社・TBSホールディングスから発表されたからだ。その一方で、日本野球機構はDeNA社からの『参加申請』を受け取っており、関係各位は11月2日の臨時実行委員会、オーナー会議の準備にも追われていた。ドラフト会場の舞台裏ではこうした喧騒も見られたが、横浜ベイスターズ・加地隆雄球団社長の真摯な姿勢に感銘した。 この日、同社長は休養中の尾花高夫監督に代わって、1位入札選手の抽選クジを引くため、雛壇にも上がっている。とくに印象に残ったのは2度目の入札で(松本竜也=英明高)、巨人とかち合ったときだった。自身の抽選結果が『ハズレ』と分かるなり、左隣の巨人・清武英利GMに手を延ばし、ファンに巨人が『当たりクジ』を引いたことを会場のファンに伝えた。退く際も同GMよりも一歩下がって歩き、むしろ笑顔で自軍のテーブルに帰って行った。1位指名後の会見にも応じてくれたが、開口一番、「悔しいです」−−。その言葉に嘘はないだろう。しかし、その語り口はソフトで、ここまで自分の感情をコントロールできる人もなかなかいないと思った…。 この1年間、加地社長はペナントレースを戦う選手よりも厳しい日々を送っていたのではないだろうか。当たり前だが、昨年オフから続く球団買収問題の話を振ると、選手は露骨に嫌な顔をする。親会社・TBSホールディングスが球団売却の方向で関係各所と話を進めてきたのは紛れもない事実だが、その情報の全てがベイスターズに伝えられていたわけではない。加地社長も知らない話がいくつかあったという。 「球団の売却? 知っていたら、教えてほしい。本当はどうなっているんだ!?」 筆者も球団関係者から“逆取材”を受けたことがある。 なのに、同社長は選手たちの前に立ち、球団の今後を説明し、まるで自分に責任があるかのように頭を下げた。元電通マンで、TV制作プロ『C.A.L.』時代にドラマ『水戸黄門』を担当していた経歴は有名である。 球団社長の就任会見でも葵の御紋シールを自身のケータイに貼っていたので、報道陣からは印籠を出すポーズを要請されたが、個人的にはその直後の発言の方が衝撃的だった。 地元横浜高の「筒香嘉智を1位指名すべき」と公言したのもある。 当時、横浜スカウト陣は菊池雄星を指名する方向で調整していた。それを『鶴の一声』で一変させ、取材者の1人として、混乱する現場を目の当たりにしている。「ベイスターズは大丈夫だろうか」と批判的に見ていたが、この2年間の誠実な対応、そしてドラフト会場での紳士的な言動に、こちらの考えが間違っていたことに気づかされた。 「詳しくはいえないが、加地社長は古巣の電通を訪ね、独自の球団再生案を提示し、その協力を求めていました」(広告代理店幹部) この1年間、球団再生のために奔走していたことは皆が認めている。同広告代理店幹部によれば、加地社長は「喋り出したら止まらない人」だと言う。各方面に出向き、横浜経済、地域産業と野球をリンクさせるアイディアを語り、その協力を求め、頭を下げ続けていたそうだ。 ベイスターズナインが球団売却の危機にあっても動じなかったのは同社長の苦労を知っていたからだろう。 「球団売却の話はTBSホールディングスから一方的に報告がされるだけ。本当にこちらは何も分からないんです」(関係者) 失礼ながら、加地社長は少しお疲れのようにも見受けられた。ベイスターズの再生はもちろんだが、フットワークも軽く、真摯な氏の言動に敬意を表したい。(一部敬称略/スポーツライター・飯山満)