「もうオレにはあまり時間がないからな」。今年の2月いっぱいで定年を迎えるトレーナー。そんななか、残り少ないタイトル奪取のチャンスに望みを託す一頭が日経新春杯に送り出すホッコーパドゥシャだ。
浜田師は体の加減や、厩舎ゆかりのオーナーの他界などが重なり、近年は不本意な成績。久しぶりのネッコリ取材となったが、そのていねいな応対はファレノプシスやビワハイジ、そして、あのビワハヤヒデで一世を風靡(ふうび)していた当時と変わらぬまま。
「我々の仕事は、新聞記者さんが大勢、取材に訪れてくれるような厩舎にすることだからね」。そう温かく迎えてくださった天をも包む人間味の大きさには目頭が熱くなるほどうれしかった。
そのパドゥシャ。「賞金的に使えるところがなくて、前走は距離不足を承知の上、(阪神の)外回りだけを頼りに千六を使ったんだけど、流れが速くてあの位置取り(3角11番手)に…。それでも、4角で外に持ち出してからは急追。浜中も『完全に脚を余してしまいました』と言っていたし、エンジンがかかったところがゴール板だった」
勝ち馬をもしのぐラスト3F34秒5の鋭脚を思い浮かべる師は、そのレースぶりからも間違いなく外回りの京都2400メートルは最高の条件という。
「食いが良くて毛ヅヤもいい。オレに残された時間は少ないが、区切りの重賞20勝まではあとひとつ。今週のパドゥシャ、来週の平安Sを予定しているネイキッドで何としても達成したい」と名伯楽。この世に競馬の神がいるなら、その最後の願いは絶対にかなうはずだ。