気心の知れた渡辺久信ゼネラルマネージャー(以下=GM)のいる古巣か、兄貴分だった石井一久GMの楽天か…。両球団とも「興味アリ!」と明言しており、ひと足早い争奪戦が繰り広げられそうだ。
「渡辺、石井両氏とも、牧田がマイナー落ちを受け入れたころ、電話で直接話をしていたみたいですね。最終的に牧田の意思を尊重したというよりは、パドレスのマイナー組織を経験したほうが、後々の本人のためになると思ったところもあるみたいで」(球界関係者)
パドレスのマイナー組織は若手育成に定評があるのだ。優れた指導者がいることはもちろんだが、A.J.プレラーGMは、毎年オフ、若手を大量に集めるトレードを続けてきた。トレーニング施設にもお金を掛け、チーム本隊の戦力補強よりも、他球団でくすぶっている中堅、若手を見つけ出すことに重点をおいてきた。
GMの本来の仕事は、チームの順位を上げること。そちらでは結果はまだ出ていないが、マイナー組織を充実させた手腕は、高く評価されているという。
米国人ライターがこう続ける。
「2016年、プレラーGMはメジャーリーグ機構から処罰されました。機構がGMを処罰するのは異例中の異例です。プレラーGMは主力選手を放出し、有望な若手を獲るトレードを成立させました。ところが、その放出した主力選手の健康診断書にアヤシイところがあったんです。パドレスを出された主力選手は、移籍後すぐに故障離脱してしまったんです。健康診断書を書き換えたのではないか、と…」
とはいえ、今季までだったプレラーGMの契約が、2022年まで延長されたのだから、パドレスは「マイナー組織の充実、育成重視」を掲げる彼の手腕を高く評価していることは間違いない。
「若手の練習メニューも一律ではありません。体力、体格、選手の長所に応じたプログラムを組み立てています。少ない予算でマイナーの練習施設を充実させてきました」(前出・同)
パドレスのマイナー組織に関するデータや、他球団でくすぶっている若手のどこをチェックして、「素質」を見抜くかなどのデータは極秘事項となっている。
「西武は若手の選手寮を造り替えたばかりです。80年代は施設面でも優れた球団だと位置づけられていましたが、昨今ではソフトバンクや巨人に出遅れてしまいました。渡辺GMは牧田がパドレスのマイナーで経験してきたことにも興味を持っているのでは」(前出・球界関係者)
パドレスは日本ハム球団と業務提携も交わしている。日本ハムは独自のシステムを使い、低予算で強いチームを作ってきた。日本の他球団が日本ハムに倣ってきたのも有名な話。牧田の争奪戦にはこうした球団運営論や、「プレラー・ビジョンが知りたい!」の願望も含まれているのではないだろうか。先発投手が不足している日ハムの強奪も考えられるが…。(スポーツライター・飯山満)