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消極的な賛成が約5割 高野連のタイブレーク制はどうなる?

 9月29日、日本高校野球連盟(以下=高野連)は大阪市内の事務所で『技術・振興委員会』を開き、タイブレーク制導入に関するアンケート結果を公表した。『条件付きでの導入賛成』が49.7%に達したという。
 高野連がタイブレーク制の導入を検討していることが明らかになったのは、『夏の甲子園大会』の地方予選中だった。硬式、軟式の全加盟校の指導者にも意見を求め、7、8月にアンケート調査を実施した。そもそも、タイブレーク制の導入が検討された目的は球児の怪我を防ぐためで、同アンケートには『投球数制限』『イニング数制限』など、タイブレーク制に変わり得る“代案”も選択できるようになっていた。
 「アンケート用紙には、望ましい球児の健康管理方法を『以下の4つから選んでほしい』という内容になっていました」(関東圏私立高校指導者)

 タイブレーク制導入=49.7%
 投球数制限=12%
 イニング数制限=10.7%
 現状維持=27.6%

 硬式の加盟校4030校中、アンケートを応じたのは3961校(回答率98%)。今夏、4日間に渡る延長50回の死闘が繰り広げられた軟式は、460校中444校(同96.5%)が回答したという。
 「(大会中の)連戦を防ぐための日程見直しなどを含め、幅広く議論していく」(竹中雅彦・事務局長)
 タイブレーク制が最多票を得たわけだが、“消極的な賛成”と見ていいだろう。厳密な言い方をすれば、『タイブレーク制』のなかにも選択の幅があったという。
 「延長10回、一死二・三塁から…」
 「同、無死満塁から…」
 「甲子園(地方予選)に直結しない春季大会のみ導入」等々。
 投球数やイニング数にも、選択の幅もあったそうだ。

 「秋の明治神宮大会、国体ではタイブレーク制がすでに行われています。すでにタイブレーク制を経験している強豪校もあるので、投球、イニング数制限よりも違和感がなかったんだと思います」(前出・私立校指導者)
 詳細は省くが、投球数やイニング数に制限が設けられると、「作戦面に大きな影響が出る」(同)という。また、投球数に制限が加えられると、投手のできる球児が少ない高校、部員数の少ない公立校は“致命的なハンデ”を負うことにもなりかねない。投球・イニング数に制限を設ける怪我防止策の票が伸び悩んだ理由はここにもありそうだ。

 穿った見方をすれば、高野連は投球・イニング数に制限が設けられた場合のリスクも分かっていたのではないだろうか。「タイブレーク制を選んでくれ」という、無言のメッセージもアンケートには込められていたかもしれない。

 高校野球ファンがタイブレーク制の導入に批判的なのは、58年・徳島商対魚津、98年・横浜対PL学園、06年・早業対駒大苫小牧など名勝負が誕生しにくい状況に陥るからだろう。甲子園のドラマ、感動は延長戦に突入した試合から多く生まれている。
 03年、高野連は4連戦をなくすため、準決勝を2日間に分ける『怪我防止策』を実施し(同年は雨天により1日で消化)、13年には3連戦を防ぐため、準決勝を1日4試合に戻し、翌日に休養日を設ける内容に変更している。「タイブレーク制を議論する前に、日程を見直せ」と語る文化人もいたが、高野連がこれまでも日程問題に真摯に取り組んできたことは強調しておきたい。今回、タイブレーク制が浮上してきた直接の理由は、今春のセンバツ大会にある。雨天順延が続き、休養日が消滅してしまったからだ。

 緩やかな大会日程を組めば、学校行事、通常授業にも影響が生じ、天候(雨天)の心配もしなければならない。29日の『技術・振興委員会』後、高野連要人たちは報道陣の質問にも丁寧に応じてくれたが、繰り返し語っていた言葉が「健康管理」だった。
 高野連要人は「(タイブレーク制導入の結論が)“ありき”ではない」と語っていたが、11月20日の『拡大技術振興委員会』でも全員が納得する結論は出ないだろう。(スポーツライター・美山和也)

※一部メディアは『タイブレイク』と記していましたが、本サイトは高野連の関連資料等にもある『タイブレーク』と表記いたしまた。

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