昨9日に大井競馬場で行われた「第10回ジャパンダートダービー」(JpnI 2000m)。当日にジンマシンに見舞われ、“ドタキャン”をかましてしまったユキチャンに、周囲は大あわて。競走除外の発表後、大井競馬場への送迎バスの各バス停には、これを知らせる張り紙が貼られた。かつて降雪や馬インフルエンザの影響で開催中止となったときにこうした処置が取られることはあったが、一頭の牝馬のためだけにここまで人が動かされたことはない。まさにVIP待遇、異例の事態だ。
競馬場内では「ユキチャンみたいに強くてきれいな子になってほしい」と、大きなお腹をさすりながらレースを楽しんでいた30代の夫婦が「除外で残念」と肩を落としていたが、同様の声がファンの多くから聞かれた。
それでも、ユキチャンがもたらした効果は絶大だった。前売発売の返還金が売上の40.8%に及んだにもかかわらず、レースおよび一日の売上はともにレコードを更新。入場人員はレコードに届かなかったものの、前年比155.7%という驚異的な伸び率を見せた。
また、このドタバタに乗じて商売をするちゃっかり者も。あるインターネットオークションには前日発売された“幻の”ユキチャン単勝馬券(100円)が出品され、2000円以上の値をつけた。
“本人”不在でも巻き起こる「ユキチャン狂想曲」。アイドルホースの実力たるや、あっぱれだ。
○ユキチャン 突然の“異変”
突然のアクシデントだった。白毛のアイドルホース・ユキチャン(牝3歳、美浦・後藤厩舎)はレース当日、ジンマシンに見舞われ、競争除外となった。
9日午前、美浦トレセンから決戦の地・大井へ向かう馬運車に乗り込もうとしたときだった。後藤師が愛馬の“異変”に気づいた。
「もともと皮膚が弱い馬でね」と後藤師。今朝の段階から肌荒れ程度の症状は見られたというが、「馬運車に乗せようとしたときは、かなりひどくなっていた。残念です」と無念の表情で語った。
次週の川崎・スパーキングレディーCにも登録はあるが、これは地方競馬の規定により、出走することはできない。次走は旭川のブリーダーズGC(JpnII 2300m 8月14日)が有力視されている。