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前代未聞!飯塚高史、野上慎平アナ涙の実況も引退セレモニーを行わず現役生活に終止符

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飯塚高史、野上慎平アナ

新日本プロレス
『NEW JAPAN ROAD〜飯塚高史引退記念試合〜』
▽21日 東京・後楽園ホール 観衆 1,726人(札止め)

「きょうは気合い入れて頑張ります!」.

 試合前、テレビ朝日の野上慎平アナウンサーは普段とは違い、緊張した面持ちで実況への意気込みを語っていた。天山広吉との“友情タッグ”が復活するかが大きなテーマになっていた飯塚高史の引退試合。飯塚を怪奇派のヒールレスラーとして押し上げたのは、飯塚による一連の野上アナ襲撃だったのは言うまでもない。野上アナのおかげもあって、飯塚は今の日本のリングでは珍しい入場時にファンが逃げる“危険”な選手となった。

 「このままでいいのか?って水面下で動いてたんだよ」

 飯塚を悪の道に誘ったG.B.Hの真壁刀義は当時をこのように振り返っている。当時のG.B.Hは新日本マットの極悪ヒールユニットだった。G.B.Hから追放された天山を救った飯塚は、友情タッグを結成。しかし、飯塚は天山をあっさりと裏切り、真壁のもとへ。頭をスキンヘッドにし、アイアン・フィンガー・フロム・ヘルという凶器を手にしたビジュアルに変貌。最初はコメントを発していたが、怪奇化が進みうめき声しか出さなくなってしまった。

 G.B.Hはその後、真壁が追放され本間が追随して現在に至る。また真壁を追放し、中邑真輔を迎え入れた矢野通らG.B.Hの残党は、新ユニットCHAOSを結成。CHAOSからヒール色が薄れると、飯塚は名パートナーだった矢野を裏切り、“旧知の仲”の鈴木みのる率いる鈴木軍へ。こうした歴史を振り返ると、新日本本隊とCHAOSの共闘が、棚橋弘至とオカダ・カズチカだけではなく、新日本マットにとって歴史的な“和解”であることがよく分かる。

 飯塚の更生を願う天山はオカダ&矢野とトリオを結成し、飯塚はみのる&タイチの鈴木軍の一員として最後の試合に臨んだ。試合前、この試合だけテレビ朝日系列『ワールドプロレスリング』の収録があったことから、野上アナが実況席に向かうと、ファンからは大「野上コール」が送られた。

 実況席にはかつて山崎隊を結成していた山崎一夫氏が、会場の隅からは同じくかつてのパートナーだった永田裕志が見守った。飯塚はいつものように南側の客席から現れ、逃げるファンをかき分けながら客席を縦断すると、一目散に実況席へ。「なぜ、飯塚は私を襲うのか聞いてみたい」と話していた野上アナを再び襲撃し、Yシャツを引き裂いて、野上アナは裸にネクタイの姿に。この襲撃でマイクが1本破壊されたという。

 オカダ組は1人ずつ入場すると天山がマイクを握り「飯塚さん!きょうで引退するんですよね?最後にもう1回、もとに戻ってください。飯塚さん!」と場外を徘徊していた飯塚に呼びかけると、飯塚はエキサイトしてリングインし、天山に攻撃。試合開始のゴングが鳴らされた。

 試合は、なぜ引退するのか全く分からないほど、飯塚の動きの良さが目立った。噛みつきなど従来のヒールファイトを中心に試合を優勢に進めていった飯塚だが、オカダのレインメーカーを切り返すと魔性のスリーパーへ。これはすぐに逃げられたが、一瞬の隙をついてビクトル式膝十字固めを極める。馳浩とソビエト(現ロシア)にサンボ修行に行った際に習得した技だ。これには大「飯塚コール」が発生。さらに、ブリザードスープレックスの体勢に入ると、会場は一気にヒートアップしたが、これは投げられず。

 しかし、飯塚が“あの頃”の飯塚に戻りそうなムードは高まっていく。その後、天山に魔性のスリーパーを極めて、大「落とせコール」。これは矢野がカット。アイアン・フィンガー・フロム・ヘルを手にすると、天山に躊躇する場面もあったが、地獄突きを放つも天山がかわして、矢野が急所攻撃。オカダのツームストンパイルドライバーから、天山がダイビングヘッドバッドを放った。

 ここで天山はフォールに行かず、涙ながらに飯塚に声をかけると、友情タッグTシャツを飯塚の体に置いてから、トップロープに上がりムーンサルトプレスでカウント3を奪った。倒れたままの飯塚に号泣しながら声をかけ続ける天山は、飯塚を起き上がらせたが、意識を戻した飯塚は天山を突き飛ばした。

 しかし、オカダと矢野は観客の飯塚コールを煽り、天山がコーナーで頭を抱える飯塚を説得した。何とか握手に応じた飯塚だったが、すぐに天山を攻撃。ここで鈴木軍がフルメンバーでリングインし、天山を捕獲したところで、アイアン・フィンガー・フロム・ヘルを装着した飯塚が地獄突きを放った。

 結局、天山の願いは通じなかった。飯塚は引退セレモニーを開くこともなく、客席を縦断しながら、控室に向かった。これを見たタイチが「飯塚!ホントに引退するのか?最後ぐらいテメェの口で言え」とマイクで呼びかけるが、聞く耳を持たなかった。するとみのるが本部席からゴングを持ち出し、10カウントゴングを鳴らすと阿部リングアナウンサーにコールを要請。「飯塚高史〜」とコールするが、本人が不在なため、観客は帰ろうにも帰れない状態になった。

 まるでコンサートのアンコールのように飯塚コールは鳴りやまなかった。しかし、本人が再び姿を現わすことはなく、阿部リングアナから「以上をもちまして本日の大会は全て終了となりました」とのアナウンスが入った。それでも飯塚コールは鳴りやまず、阿部リングアナは同様のアナウンスを繰り返しすこととなった。

 実況席では野上アナが「飯塚が嫌いなのになぜか涙が止まりません」「私にとっても区切りとなりますが、またここに戻ってきます」と話すと、ジャスティスポーズで生中継を終えた。

 野上アナは『羽鳥慎一のモーニングショー』などの出演で今や多忙。昨年からプロレス実況の本数が減っており、今回の実況をもって、ひとまず勇退ということになりそうだ。実況を終えるとファンから大「野上コール」が発生。深々と頭を下げてバックステージに引き上げた。野上アナは「野上コールよりも飯塚さんが…」と涙を流し続けた。

 大仁田厚と真鍋由アナウンサー(当時)による大仁田劇場以来だった、レスラーとアナウンサーによる物語。真鍋アナも最後は泣いていたことを思い出す。野上アナには師と仰ぐ永田裕志の節目の試合で、また復帰してもらいたい。ジャスティス!

取材・文・写真 / どら増田

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