64年東京五輪でのバンタム級の桜井孝雄(故人)以来、48年ぶり2人目の日本人金メダリストになった村田は、世界的にレベルの高いミドル級での五輪制覇とあって評価はすこぶる高い。村田自身はプロ転向に消極的とされるが、この逸材に、複数のジムがラブコール。
現WBC世界スーパーフライ級王者の佐藤洋太を始め、12人の世界王者を輩出した協栄ジム・金平桂一郎会長は「億の価値はある」と、1億円以上の契約金を準備する意向を示した。
村田が数年前から出稽古に通っているワタナベジムの渡辺均会長は、「性格がいいし、努力家。交渉します」と、こちらも村田獲りを宣言した。
他にも複数のジムが興味を示しており、村田争奪戦がし烈を極めるのは必至の情勢。ネックとなるのは、村田は大学職員という安定した職に就いており、それを捨ててまでプロに転向するかどうかだ。ただ、ボクシング界では兼業は日常的なことで、村田が望めば、東洋大に籍を置いたまま、ファイトすることも可能だ。
日本プロボクシング界では、重量級のミドル級を世界で制したのは竹原慎二(沖)ただ1人で、村田がプロ入りすれば、竹原以来の同級世界王者への期待が懸かる。
一方、フリースタイル66キロ級を制覇した米満。男子では88年ソウル五輪のフリー48キロ級の小林孝至、52キロ級の佐藤満以来、24年ぶりの金メダリストとあって、プロ側の注目度も高い。
米満には業界最大手の新日本プロレスが、獲得の意思を表明した。木谷高明会長は「獲りにいきます。アマチュアのメダリストなんだから、プロが獲りにいかないとダメ」と明言。1億円程度の契約金を用意するもよう。
米満は身長169センチとプロレスラーとしては小柄だが、昨今のプロレス界ではジュニアヘビー級という階級も確立され、170センチに満たない選手でも多数活躍している土壌がある。本人がプロレスファンというのも、新日本にとっては好材料だ。
ただ、米満も村田同様、自衛隊という安定した職にあり、それを捨てられるかどうかがポイント。さすがに、こちらは兼業というわけにもいかないため、プロ入りにはその難題が降りかかる。新日本では、アマチュア育成プロジェクト「ブシロードクラブ」を発足させたばかり。アマレスを続けたいようなら、ここに所属しながら、16年リオ五輪を目指し、その後プロ入りという選択肢もある。
金メダル獲得で、その価値が高騰した両雄。今後、プロ側のアプローチにどう応えるか、その動向に注目が集まる。
(落合一郎)