17年に開催予定の第4回WBCに向け、「侍ジャパン」は小久保裕紀氏(42)を新監督に迎え、新たなスタートを切ったが、問題点が続出し、その存続にすら黄信号が灯ってしまった。
「侍ジャパン」は11月8日〜10日に、台湾で同国代表と強化試合を3試合行った。しかし、招集されたスター選手は中田翔外野手(24=日本ハム)、嶋基宏捕手(28=楽天)くらいのもの。「3年半後のWBCを見据えた」(小久保監督)との考えの下、28歳の嶋以外は、「U26」で集められ、世間的に認知されている選手は、ほとんど選ばれなかった。
さらには、人気チームの巨人からの選出はゼロ。「U26」と限定すれば、巨人には沢村拓一投手(25)、菅野智之投手(24)、坂本勇人内野手(24)といったスター選手がいるが、巨人はただの一人も選手を派遣しなかった。
この事態に、スポーツジャーナリストのA氏は「この時期、主力選手はシーズンの疲れから、コンディション的に出たくないのがホンネでしょう。次のWBCはまだ先ですし、若手主体になったのは致し方ないところです。巨人は日本シリーズに勝つ前提で、日程的に日本シリーズとアジアシリーズの間にある『侍ジャパン』強化試合への派遣には、二の足を踏んだのでしょう」と語る。
日本シリーズといえば、楽天からは嶋、銀次内野手(25)、岡島豪郎外野手(24)と3人のレギュラー選手が選出された。かたや、巨人は先のアジアシリーズを考慮してか、主力ではない若手選手の派遣を打診したが、小久保監督のメガネにかなう選手はいなかったようだ。
このパッとしないメンバーでは、ファンの関心を集めるはずはない。今強化試合は3試合とも、地上波のゴールデンタイムで生中継され、第1戦(8日=テレビ朝日系)こそ、10.9%(視聴率は以下、すべて関東地区)と辛うじて2ケタ台をマークしたが、第2戦(9日=TBS系)は9.8%、第3戦(10日=テレビ朝日系)は9.1%と1ケタ台に低迷した。TBSは放送時間を延長して、試合終了まで放送したが、テレビ朝日は「このメンバーでは数字が獲れない」と予想していたのか、1戦も3戦も放送時間を延長せず、試合の途中で放送を打ち切った。
「侍ジャパン」強化試合の視聴率が、この程度しか獲れないのなら、今後地上波での中継はおぼつかない。それこそ、BSやCSでの放送となると、NPB(日本野球機構)としては放映権料収入に大きく響いてくる。
そもそも、「侍ジャパン」はWBC本大会において、主催者のWBCI(ワールド・ベースボール・クラシック・インク)側から、NPBへの収益配分が少ないため、それを補てんするために、スポンサー収入を当て込んで、常設化したもの。にもかかわらず、今後もスター選手抜きで代表選考をするなら、スポンサー収入、放映権料収入に影響してくるのは明白。
そうなると、「侍ジャパン」常設化の本来の目的である「資金集め」ができず、継続すること自体に疑問符も付く。小久保監督にとっては、悩ましい問題を抱えたといえそうだ。
(落合一郎)