折りしも、同誌の発売日当日はWBC2次ラウンド1組の初戦の台湾戦(東京ドーム)。まさに、WBCに水を差す格好となったが、ファンの冷たい視線を浴びるなか、杉内は救援登板のスタンバイとなった。
試合は日本が2-3の劣勢から、9回表に井端弘和内野手(37=中日)の同点タイムリーが飛び出し、10回表に中田翔外野手(23=日本ハム)の犠牲フライで逆転。4-3で迎えた10回裏を任されたのは渦中の杉内。
杉内は典型的な先発投手で、プロ通算249試合登板中、リリーフはわずか7試合しかない。しかも、公式戦では06年を最後に救援登板はなく、セーブは一つも記録していない。
慣れない抑えで、杉内は一死後、連打を浴びて、一、二塁のピンチを招いたが、チェン・ヨンジーを遊ゴロ併殺打に仕留めて、ゲームセット。冷や冷やながら役目を果たした杉内は、珍しくガッツポーズを繰り出して、喜びをあらわにした。
杉内は「絶対に抑えてやろうという気持ちだった。抑えの気持ちが分かった」とコメントし、安堵の表情を浮かべた。
それも無理からぬところ。この場面で打たれて同点、または逆転サヨナラ負けを喫していれば、ブーイングを浴びても仕方がない状況だったが、命からがら、それは回避した。
ただ、これで“みそぎ”がすんだわけではない。杉内は今後も救援スタンバイが濃厚で、与田剛投手コーチは「展開によっては抑えもあると思う」と話した。WBC期間中、杉内は重い十字架を背負っての登板が続くことになる。
(落合一郎)