ご覧のとおり、遊女が鶴の背中に乗り空を舞っている様子がおさめられている不思議な一枚となっている。
まるで「浦島太郎」のような、「ウルトラQ」のようなこの写真。一体、この写真はなんなのだろうか。
実は日本ではこのように鶴の上に人が乗るという逸話は多数残されており、浮世絵にも「鶴上の遊女」としてその姿が描かれている。遊女が乗っている動物も鶴のほか鯉などあらゆる種類が描かれており、見るものを楽しませてくれる。
なお、「鶴に乗った」という人物は1999年まで日本で生きていたとされる。その人物の名は「笹目秀和(ささめしゅうわ)」。日本では「仙人」と呼ばれていた人物である。
笹目仙人は「鶴船(鶴仙)」と呼ばれる不思議な乗り物に乗り、800kmもの道を一瞬で移動したと伝えられ、彼の鶴に乗る姿こそが「仙人」のひとつの到達点と言われている。
笹目仙人は1999年に94歳で没したが近年まで「仙人」と称される人物が日本にいたとは驚きである。
さて、今回のご紹介した写真であるがこの遊女は仙人的な力をもっていたわけではなく、明治の商人が個人的な趣味で作り上げたトリック写真であるという。
当時、写真機は今では考えられないほど高価な代物であり、個人が入手するのは非常に困難な時代。いわゆる「カメラマニア」の豪商たちが己の財力、技術をライバルに見せつけるためこのようなトリック写真が制作されたと言われている。
「仙人」に憧れたり「動物に乗る」夢を見るのは、明治も平成も変わらないということか。
(山口敏太郎事務所)