大型連休の連戦が終わり、プロ野球各チームは「ちょっとお疲れ」といったところ。5月後半にその疲れの出始めたチームを建て直し、6月4日スタートの交流戦に備えなければならない。交流戦でパ・リーグとの相性が悪いセ・リーグはGW明けの建て直しが重要になってくる。
「阪神がちょっと心配ですね。巨人はGWの連戦を巧くしのいだという感もあります」(パ・リーグ球団スコアラー)
GW期間中の10連戦だが、巨人の成績は5勝4敗1分け。阪神は7勝3敗。数字上ではこの間、勝率を落としたのは巨人のほうだ。勝ち星を伸ばした阪神のほうが「低評価」となった。その理由を聞かされると、チーム再建とは本当に長い道のりであるようだ。
「矢野燿大監督(50)は得点シーンで大げさな喜び方をします。ベンチを盛り上げるため、あえてやっているんでしょうが」(前出・同)
このパフォーマンスについては、開幕当初から賛否両論が出ていた。「負けが込んだときにどうするのか。選手がベンチのほうを見てプレーするようになる」等々…。
しかし、前任の金本知憲監督のころ、阪神ベンチはピリピリしていた。凡ミスが続くと、金本前監督は腕組みをし、苦虫を噛みつぶしたような表情をする。怒鳴りつけることはしないが、選手は萎縮し、ドロ沼の連敗街道にはまってしまった。
こうしたムードに再び陥ることのないよう、矢野監督自らが明るく、前向きな雰囲気作りをしているのだという。
5月5日の対DeNA戦だった。阪神は勝利を収めているが、1イニングで3つのエラーを重ね、先制点を許した。その失点につながったエラーだが、スタメン遊撃手・木浪聖也(24)が2つ犯している。また、エラーの記録はつかなかったが、送球判断ミスのフィルダースチョイスもやってしまった。
木浪個人を責めるわけではないが、こんな指摘も聞かれた。
「その木浪が名誉挽回の同点ヒットを打ったんですが、ベース上でガッツポーズをしました。誰のミスで苦しい展開になったのか。矢野監督の目指す明るいムード作りが、悪い方向に行ってしまっている」
阪神OBを含む複数のプロ野球解説者がそう嘆いていた。
一方、GW期間中に勝率を落とした原巨人に対し、こんな高評価も聞かれた。
「原辰徳監督(60)は不振のゲレーロ、ビヤヌエバの両外国人選手を再調整で二軍に落とし、山本、増田大、重信、石川、北村らの若手を登用しました。連戦で体力のある若手をテストし、両外国人選手を『隠した』ところが、実にしたたかです」
前出のパ・リーグ球団スコアラーの言葉だ。「隠した」なるセリフの意味だが、GW期間から、12球団は交流戦に臨むためのデータ収集を本格化させる。パ・リーグ球団からすれば、ゲレーロ、ビヤヌエバを見る機会がなかったわけだ。連戦の疲れが出始める5月中旬以降、原監督は勢いのある若手と再スタートを切る両外国人選手の調整に充てようとしている。これに対し、失策を一本の適時打で帳消し、なかったことにする矢野采配はいかがなものか、と…。
最下位からのチーム再建を図る矢野監督は、ベンチのムードを明るくした今、次にどんな一手を打ってくるのだろうか。
(スポーツライター・飯山満)